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【木内博一の和のマネジメントと郷の精神】
初公開! 和郷グループの金融戦略と哲学
- (有)和郷、生産組合(農)和郷園 代表理事 木内博一
- 第26回 2010年12月08日
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今回、農場の経営戦略として「半上場」という考え方を紹介したい。ファイナンス(金融)を軸とした事業手法のひとつだ。
農業は「地域産業」の重要なプレイヤーだ。だから、地域の持続性を理念の一番に据え、経営を行なう農場は多い。農業は「資本主義」世界の一プレイヤーでもある。この世界で生き残らなければ、地域の存続は危うい。本当に理念を実現したいのなら、資本主義の論理、特にファイナンスの仕組みを理解して、柔軟に対応していく必要がある。
成長スピードが遅い理由
まず、通常の企業ファイナンスと農家ファイナンスの違いを整理しておこう。企業の強みは、資本調達を直接金融で行なうことによる成長スピードである。上場すれば、さらに加速化する。
一方、農業はまだ「資本主義」世界ではプレイヤーになりきれていない。ほとんどが銀行等からの融資という間接金融からの資金に頼っているからだ。これは、長期的な投資が必要なインフラ産業である農業の成長にとって致命的である。
私の見立てでは、両者の成長スピードは単純計算でも大きな違いがある。実際に比較検証してみよう。
例えば、1億円で温室ハウスを建てるとする。ハウスの規模は、建設費が坪あたり6万円程度と考えると、総額1億円の投資で約1700坪程度と想像してもらいたい。ハウスの減価償却は20年間としよう。間接金融の場合、大方の年間返済額は元金が500万円、金利を2%固定とすると金利払いが100万円で、合計600万円が生じる。年間生産額は、果菜類の栽培では坪あたり2万円として3400万円程度である。現状のデフレ化では、3400万円の粗利から諸経費(栽培費、管理費、人件費)を引いた残りの金額は20%程度の680万円になる。このハウスから得られる税引き前の利益は、ここから年間返済額の600万円を差し引いた80万円ということになる。さらに、税金を差し引くため、実際には50万円前後の年間成長になるだろう。
それに対して、直接金融から資本を調達すれば、元金を返済しなくていい。つまり、前述の元金返済分の500万円が丸ごと発生しないのである。680万円から、税引き後の配当を仮に前述の金利同様に100万円を配当したとしても、間接金融の場合に比べ、成長スピードに大きな差がつく。成長機会があれば内部留保して投資に差し向けられる。また次の利益を放出できる強みを持てるというわけである。なぜなら株主が将来成長を期待して、配当を待ってくれるからだ。
では、大方の農場のように間接金融のみに依存するとは、どういう投資モデルなのだろうか。減価償却を切り口に説明しよう。
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木内博一 キウチヒロカズ
(有)和郷、生産組合(農)和郷園
代表理事
1967年千葉県生まれ。農業者大学校卒業後、90年に就農。96年事業会社(有)和郷を、98年生産組合(株)和郷園を設立。生産・流通事業のほか、リサイクル事業や冷凍工場、カット・パッキングセンター、直営店舗の展開をすすめる。05年海外事業部を立ち上げ、タイでマンゴー、バナナの生産開始。07年日本から香港への輸出事業スタート。現在、ターゲット国を拡大準備中。起業わずか15年でグループ売上約50億円の農系企業を築き上げた木内氏の「和のマネジメントと郷の精神」。『農業経営者』での連載で、その“事業ビジョンの本質”を初めて明かす。
木内博一の和のマネジメントと郷の精神
起業わずか15年でグループ売上約50億円の農業ビジネスを築き上げた“農業界の革命児”木内博一。攻めの一手を極める氏の経営戦略と思考プロセスを毎月、明かしていく。
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