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一般的に、企業の経営を評価することはデューディリジェンスといって、環境、会計、法務の項目に分けられる。事前に資料や書類が精査され、その上で専門家らが現場で聞き取り調査を行なう。弊社でも調査員を受け入れて、彼らの物差しで弊社を見てもらった。満たされていない項目については指摘されるので、弊社が抱えている課題が見つかる。
具体的に何を評価するのかと言えば、大きく二つある。まず、目に見える物を金額という数字で表す、ずばり会計のことである。土地、機械、建物などは未償却分が資産になる。この部分は皆さんも馴染みがあることだろう。もうひとつは、資産の中にある潜在的な要因をはっきりと目に見える形にすることである。マイナス要因はリスクとして、プラス要因も同様に顕在化させて数値化する。
リスクを評価する
では、ここでいうリスクとは何だろうか。前提にあるのは、事故が起こりそうなこと、企業が賠償責任を負うような事態が発生する可能性は、予め回避しなければいけないということだ。リスクを評価する目的は、そういった事態が発生した場合の補償にいくらの準備が必要かという数字を知ることである。
環境分野の一例に、圃場の周りに工場やガソリンスタンドなどがないか、過去にもなかったかといった形で問われる土壌の重金属汚染リスクがある。これは、汚染された土壌で作られた作物から発生する事故を避けるためである。航空写真を現在から過去にまで遡ってチェックしてみると、周辺にはいろいろな変遷が見えてくる。長年管理している圃場の近くは大抵把握できていて、この辺りには、こんな施設があったのかという発見は少ない。だが、拡張した圃場については地主さんから伺った情報以上のことが分かることもあるかもしれない。
また、従業員が増えてきた弊社では、労働組合や勤務時間の規則など、企業として法令遵守するためのアドバイスもあった。人的な要因は、社内のルールや体制などもリスク評価の対象になる。この場合、事故を防ぐだけでなく、事故が起こったときの対応も重要なのだ。全国から弊社に興味をもって集まってくれたスタッフに対して、こういった改善をして働きやすい場を提供していかなければならない。
こういう過程を経て、会計評価された資産に、事業ポテンシャルが高ければ加算、リスク評価分は減算されて額面が出る。弊社の時価総額を実際に受け取ったとき、農場には物だけがあっても仕方がないという気付きを得た。同時に物や人を活かすための仕組みを残していくことが我々の使命であるということを再認識できたのだ。
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坂上隆 サカウエタカシ
農業生産法人 株式会社さかうえ
社長
1968年鹿児島県生まれ。24歳で就農。コンビニおでん用ダイコンの契約栽培拡大を通して、98年から生産工程・投資・予算管理の「見える化」に着手。これを進化させたIT活用による工程管理システム開発に数千万円単位で投資し続けている。現在、150haの作付面積で、青汁用ケール、ポテトチップ用ジャガイモ、焼酎用サツマイモなどを生産、提携メーカーへ全量出荷する。「契約数量・品質・納期は完全100%遵守」がポリシー。03年、500馬力のコーンハーベスタ購入に自己資金3000万円を投下し、トウモロコシ事業に参入。コーンサイレージ製造販売とデントコーン受託生産管理を組み合わせた畜産ソリューションを日本で初めて事業化。売上高2億7000万円。08年から食品加工事業に進出。剣道7段。
坂上隆の幸せを見える化する農業ビジネス
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