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【農水捏造 食料自給率向上の罠】
農産物輸出の世界シェアわずか0.2%の日本農業はTPP参加で成長する!
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 第26回 2010年12月08日
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政府が検討するTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加の是非を巡って、国論が二分している。「農業をどうするか」を論点にTPP推進派と反対派それぞれ、議論が沸騰しているのだ。
政府の「開国と農業再生を両立する」(菅直人首相)認識に対し、地方選出議員ら、与野党を超えた国内農業保護派の反発は根強い。200人近くの民主党議員が「TPPに参加すれば、農業は壊滅する」(TPPを慎重に考える会・山田正彦会長、前農相)と断固反対を表明。自民党も農協・農村票をバックにする議員ら約100人が「TPP参加の即時撤回を求める会」(会長・森山裕衆院議員)に結集している。
対する推進派は、「国内総生産(GDP)構成比1.5%の農業を守るために、残り98.5%を犠牲にするのか」(前原誠司外相)、「参加しないと日本は世界の孤児になる。競争力なき国内農業の構造改革加速化を」(米倉弘昌・日本経団連会長)とし、暗に農業を犠牲にしても参加するべきと主張する。
両論──反対派の「農業壊滅論」、推進派の「農業犠牲論」──ともに的外れである。農業ビジネスの本質を完全に見誤っている。
伸び悩む農産物の輸入力
図1・2を見てもらいたい。日本と「TPP9カ国(加盟済み4カ国および参加協議中5カ国)および参加に関心を示している中国」の農産物輸入額(図1)と農産物を除くその他の全輸入額(図2)の過去10年推移を示したものである。
TPP9カ国および中国の輸入額の伸び率は、農産物とその他の双方、横ばい傾向の日本を大きく上回っているのが分かる。そして、農産物の輸入は、工業製品やその原料を含むその他の輸入額の成長率にほぼ比例している。つまり、これらの国々では経済成長と所得向上によって、他産業の輸入増加と並んで、農産物の輸入が伸びているのだ。
農産物で見れば、輸入額は1998年から2007年で810億ドルから1710億ドルと2倍超増えている。その増額は910億ドルで、日本の農業生産額に匹敵する。要するにわずか過去10年で、日本の農業生産額を上回る大きな輸出市場がTPP9カ国および中国に、新たに生まれたことを意味する。さらに日本より成長率が断然高い。すでに世界の農産物貿易額のうち、これら10カ国で5分の1を占めている。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
農水捏造 食料自給率向上の罠
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