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【土門「辛」聞】
国を変える覚悟でTPPに参加せよ
- 土門剛
- 第78回 2010年12月28日
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新しき 年の始めの 初春の 今日降る雪の いや重け吉事
万葉の家人、大伴家持が、宮中の政変で地方(因幡の国)に飛ばされていた天平宝字3年、西暦759年の正月の宴で、世の人々の幸せを祈念して、こう詠んだという。旧暦を使っていた時代には、旧正月と立春が重なることがあり、それを万葉人は「吉事」(よごと)と尊んだ。「いや重け吉事」とは、「いやしけよごと」と読み、ますます良いことが重なるようにという意である。
今年は、旧正月が2月3日で、立春は同4日である。ピッタリ一致ということではないが、1日のズレでも暦の上では10年に一度ぐらいで、吉事に次いで縁起のよい年ではないかと思う。農業界は、環太平洋経済連携協定(以下、TPP)参加をめぐり大乱の兆し有りだが、それはそれとして家持が願ったように、読者各位に吉事が重なるように祈念している。
さて今月もTPP参加問題を取り上げ、お正月だけにスケール感のある話題をお届けしたい。
市場開放こそ閉塞日本を打破する
A君 貿易自由化交渉の枠組みが大きく変わったみたいだね。
筆者 1995年にスタートした世界貿易機関(以下、WTO)交渉はよく知っているね。世界150カ国以上の国が加盟する国際機関だが、加盟国数が多い分、それだけ利害も複雑で交渉がなかなかまとまらなかった。加えて、その後に市場統合したEUの成果があり、WTOのような交渉フレームワークでは時代の要請に合わなくなってきた。
それで利害が一致する国々や地域が集まって交渉するようになり、それが自由貿易協定(以下、FTA)や経済連携協定(以下、EPA)となり、さらにはTPPという形に発展してきた。
日本政府は、どちらかというと貿易自由化の主軸をWTO交渉に置いて、FTAやEPAをないがしろにしてきた経緯がある。そのような状況の中でTPPがいきなり脚光を浴びるようになって、日本全体が面食らっているみたいだ。
A君 TPP参加って、そんなにすごいことなのかい?
筆者 どれだけすごいか。TPP参加に反対する山田正彦前農水大臣が「TPPに参加したら、国の形が変わる」と言っていたが、それぐらいのインパクトはある。モノ、サービスだけでなくヒトについても市場開放であることを忘れてはならない。
ヒトの自由化は、労働市場を完全開放することになり、場合によっては、農産物の市場開放問題以上の影響が出てくるかもしれない。具体的にはTPP加盟国から安い労働力が入ってきて、日本人の雇用の場が失われかねない大きなリスクがある。
A君 じゃ、TPP参加に反対ということかい。
筆者 そんなリスクがあってもプラス面が多いということで賛成する。世界は北米自由貿易協定(NAFTA)や、欧州連合(以下、EU)、アセアン自由貿易地域(AFTA)など地域間での市場統合や自由貿易協定でオープンなマーケットを目指している。
いずれ東アジアも、市場統合に到らなくてもフラットな市場になっていくし、またそうならなければおかしい。農産物や労働についての市場開放に伴うマイナス面だけに目を向けるのではなく、市場開放によるプラス面をもっと積極評価すべきではないかと思う。
相手に攻められたらこっちから攻め返すということが必要なのだ。
A君 TPP参加でどんなことが期待できるのか。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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