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農水捏造 食料自給率向上の罠

TPP反対派「日本の水田の9割はなくなる」の根拠は農水省の粉飾試算だ

TPP参加問題、反対派は「農業壊滅論」を主張する。日本のコメの9割が本当に外米に置き換わるのか? 本当に安いコメが大量に入ってくるのか? 中国、米国などのコメ情勢に照らして、農水省の作為的な宣伝の嘘を一つ一つ検証する。

 菅直人首相が参加表明していたTPP(環太平洋経済連携協定)は、農業団体、民主党農水族の反発を招き、事前協議を開始するとの後退した内容で決着した。判断を先送りした一番大きな理由は、反対派の「農業壊滅論」だ。

 今回はその本丸──「日本の水田の9割がなくなる」とされるコメ壊滅論について、その根拠を一つずつ切り崩していこう。

 壊滅論の根拠は、農水省が発表した「日本のコメの90%が外米に置き換わる」「新潟米や有機米の10%しか国産は残らない」にある。その結果、コメの生産額は「1兆9800億円減少する」という。

 本当にそうなのか。この根拠が崩れれば、TPP反対運動が主張するベースもなくなる。

結論から言うと、試算の中で農水省は五つの嘘をついている。(1)コメの輸入価格(2)コメの国際市場(3)減反(生産調整)(4)農家戸別所得補償 (5)食料自給率、についてだ。今月号では(1)、(2)について集中的に論じる((3)~(5)は次号)。

輸入価格の根拠は中国の加工用米

 まず輸入価格の嘘からだ。農水省は外米の価格が4分の1で、その価格は1kgあたり(以下、同じ)57円だと言う。国産米が247円(農家出荷価格)でその差190円と高すぎるから、魚沼産などのブランド米や有機米を買える1割の富裕層以外、日本国民は全員、57円の外米を買うようになる。よって、9割が外米に置き換わるとする。

 その結果、1兆8800億円の国産米販売額が失われる。残るとされる新潟米等も、現在の288円から57円に引きずられて、177円に下落し、低下による販売額減が1000億円となるという。しめて1兆9800億円なり。

 これは最新のコメの生産額1兆9014億円(農水省発表の農林水産基本データ集、2010年11月1日現在)より大きい。つまり、TPPに参加すると、現状のコメ農家の全出荷額がゼロになるどころか、マイナス800億円になるという計算だ。お米をただで配って、さらにその人に追銭をあげない限りこんな数字にならない。試算の要で、いきなり論理破綻している。

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