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視点

制度改革後に生まれるチャンス

健康管理をサポートするヘルスケア分野が産業として認識され始めたのはわずか10年前のことだ。2000年に介護保険制度ができた時、ようやく様々な企業が参画することで業界が成立した。医学的治療は報酬が決められた保険制度の中で行われるが、予防的サービスについては一部を除き自由市場である。


 健康管理をサポートするヘルスケア分野が産業として認識され始めたのはわずか10年前のことだ。2000年に介護保険制度ができた時、ようやく様々な企業が参画することで業界が成立した。

 医学的治療は報酬が決められた保険制度の中で行われるが、予防的サービスについては一部を除き自由市場である。ヘルスケア事業は、制度の中で取り組む場合と制度外で取り組む場合の2パターンがある。

 制度の中で事業を成功させるのは簡単なことではない。たとえば米国では慢性疾患の患者を支援するサポートビジネスがあり、民間保険会社が効果の高い会社を選んで業務を委託する。その際、付加価値の高いサービスを提供するほど、高い値段で売ることができる。ところが日本では特定保健指導など予防事業でさえ、実施されたケアの単位で収入が決められている。だから、現段階では事業として付加価値を高めるインセンティブがない。しかも制度の中に身を置いても、生計が保証されるものでもない。今や歯科医院の数はコンビニの数より多い。廃業する数は増加する一方、いいサービスを提供している歯科医院には患者が殺到している現実がある。制度で守られてきた医療分野でも自助努力が求められている。ヘルスケア分野においてはなおさらである。


付加価値に見合う価格とは

 もちろん、予防的医療や健康づくりといった個人を相手にした領域は自由市場なので付加価値をつけ、価格に反映できる。ただ、失敗事例には「健康」そのものを主たる目的としたものが少なくない。

 消費者が期待する付加価値とはそのサービスを利用することで“プラスアルファ”の効果、あるいはそのイメージが得られることにほかならない。事業者としては、満足して「買ってもらえる」価格で付加価値を提供できるかというバランス感覚が常に問われる。


ヘルスケアまでも仁術か

 2012年には医療・介護両分野で制度改正が行なわれる。それによって再び新たなビジネスチャンスが生まれるだろう。海外への進出も大きな起爆剤になる。日本の健康診断は、海外には存在しない慣習だ。このノウハウを海外で展開するだけでもいい。

 日本では「医は仁術」と言われてきたこともあって、ヘルスケア分野で儲けることに対して批判的な人は決して少なくない。もちろん国内における社会保障としての医療の存立基盤を揺るがす事態は許されないが、民間企業の技術やノウハウを取り入れていくために様々な規制緩和は必要だ。同時に事業者は国内だけでなく世界のヘルスケア市場を前提とした構想を持てるかどうかが成長の鍵になろう。(まとめ・鈴木工)

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