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【江刺の稲】
僕は「江刺の稲」を育てているか?
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第9回 1995年03月01日
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前号当欄で取り上げた「ニセ低農薬米報道」事件は、その後、朝日新聞が記事の訂正と「お詫び」を掲載した。それで、当欄でI氏と匿名で書いた岩手県の農業経営者(有)ライズみちのく会長・家子憲昭氏は、とりあえず公の名誉は回復されたようだ。もっとも失った信用や顧客のすべてが取り戻せるわけではないが…。
実は、前号発行後、どなたに紹介されたのか、面識もなく本誌の読者でもなかった家子氏から電話をいただいた。
頼みもしないものであったが、栽培していた稲に空中散布の農薬がかかったことを表示しなかったことは、同氏にも非がある旨を書いた。にもかかわらず、家子氏は今回の事件に関してご自身の経営者としての反省とともに記事に対するお礼を述べられた。もちろん、僕は時代に風波を立てながらも信念の経営をしておられる家子氏にエールを送るつもりで書いた。であればこそ自ら問わねばならぬことのある立場に、生意気を申し上げた。家子氏のお話は、同氏の謙虚さとともに経営者としての自負を感じるものであり、その電話を嬉しくありかたいものであると感じた。
それに触発されたこともあって、以下、僕自身の自己反省を書こうと思っている。
「江刺しの稲」と題したこのコラムは、読者と同様の一人の自営業者である僕自身の練習問題として考え報告したい、と第一回目にお断りした。他人様には笑われるかもしれないが、小さくともそれこそ人生を掛けてこの仕事をしているつもりの僕にとっての逃げ場のない確認と検証の場にしたいという思いがあるからだ。同時に、一般論として経営が語られるのでなく、特定の個人の生身の体験や失敗、感じたことをその通りに書くことこそが、読者にとっては他山の石としていただけるのではないかと考えるからだ。また、でなければ公に人を評論などするべき資格はないとも考えるからだ。
実は、前号発行後、どなたに紹介されたのか、面識もなく本誌の読者でもなかった家子氏から電話をいただいた。
頼みもしないものであったが、栽培していた稲に空中散布の農薬がかかったことを表示しなかったことは、同氏にも非がある旨を書いた。にもかかわらず、家子氏は今回の事件に関してご自身の経営者としての反省とともに記事に対するお礼を述べられた。もちろん、僕は時代に風波を立てながらも信念の経営をしておられる家子氏にエールを送るつもりで書いた。であればこそ自ら問わねばならぬことのある立場に、生意気を申し上げた。家子氏のお話は、同氏の謙虚さとともに経営者としての自負を感じるものであり、その電話を嬉しくありかたいものであると感じた。
それに触発されたこともあって、以下、僕自身の自己反省を書こうと思っている。
「江刺しの稲」と題したこのコラムは、読者と同様の一人の自営業者である僕自身の練習問題として考え報告したい、と第一回目にお断りした。他人様には笑われるかもしれないが、小さくともそれこそ人生を掛けてこの仕事をしているつもりの僕にとっての逃げ場のない確認と検証の場にしたいという思いがあるからだ。同時に、一般論として経営が語られるのでなく、特定の個人の生身の体験や失敗、感じたことをその通りに書くことこそが、読者にとっては他山の石としていただけるのではないかと考えるからだ。また、でなければ公に人を評論などするべき資格はないとも考えるからだ。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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