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【土門「辛」聞】
やっぱり「0.5ha規模」のコメ作りでは大赤字
- 土門剛
- 第79回 2011年02月01日
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農産物の市場開放問題は、地域と作物によって影響が違ってきます。大きく分ければ、零細規模が圧倒的に多く全国に農家がいる「コメ」と、市場開放の対象作物が多く、専業のプロ農家が主体の「北海道農業」の、2つのパターンに分けて対処すべきだと思います。農産物の市場開放による影響度合いが違うからです。
結論めいたものを先に示せば、「コメ」は、市場開放でこそ成り立ってきた作物で、今後も市場開放がなければ、コメ生産のある部分が崩れかねないと考えています。反対に、「北海道農業」は、市場開放でコメとは比較にならぬほどの打撃を受けると認めざるを得ません。これも市場開放に伴い、政府が「専業のプロ農家」に対し、適切な施策を講じれば、農協組織が主張する「地域の崩壊、農業の崩壊」(日本記者クラブでの茂木全中会長の発言)につながる事態には至らないと思うのです。
これから数回にわたって、この問題に触れていきたいと思います。まず、第一弾として「コメ」から説明を始めましょう。
1ha以下の農家が日本のコメ作りの主役
日本のコメ――、最大の特質は農家の数がとても多いことです。コメ農家は、農水省の調査で140万戸もいます。これは同省の統計用語で「販売農家」と称するもので、2005年の農林業センサスの数字です。「販売農家」というのは、30a以上の経営耕地面積があるか、年間のコメを含めた農産物販売金額が50万円以上の農家を指しています。
そして平均耕作面積は、1.2haという規模でしかありません。東京ドーム(46755平方メートル)の4分の1に相当します。東京ドームと比較できるところが、日本のコメ作りの構造的な面を物語っていると思いませんか。
ここでしっかりと頭にたたき込んでいただきたいのは、そうした零細規模農家が、日本のコメの主役であるという事実です。1ha以下の農家を零細規模と区切れば、その層が全体の73%もいて、コメ生産の40%を担っているのです。1~3haという層を含めると、なんと全販売農家の95%になり、コメ生産の67%を担うのです。ちなみに10ha以上の大規模農家は、1%も満たない1万戸しかありませんが、コメ生産の15%を担っています。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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