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永続的な企業体の成長ポリシー
課題は、哲学性、環境性、経済性という3つの考え方の融合だ。これは当社のミッション(使命)と言い換えてもいい。改めてひとつずつ整理しよう。
哲学性については、前述のとおり、自分自身の生き方を問うことである。何をするべきかという個人の信念を、組織の指針や社会の利益に照らし合わせる。私自身、あるいは当社は世の中に対してどんな貢献ができるのかを考え続けることである。
次に、環境性とは地球環境に調和した農業を実現する使命である。かつて、化学肥料や農薬を大量に投じる農業をしていて、ある疑念が沸いてきた。経済活動のために、地球を汚しているのではないか。
ちょうどその頃、無農薬で作っていたケールの畑に自分の息子を連れて行った。彼は畑の中を走り回ったり、春先の新芽をつまんだりして遊ぶ。「これ甘いね」と言いながらケールの新芽を食べている姿に、私は農業をやっていて良かったと大変感動した。この日から、この笑顔をずっと見続けるためにはどうしたらいいのかと考えるようになった。
カーボンサイクルの考え方を導入して環境負荷の小さい仕組みを作った(10年3月号を参照)。その中で事業を進めれば、農業と密接した環境の問題にも積極的に取り組める。
3つめの経済性については、ドバイで覚えてきた(09年12月号参照)。経済の大原則は、労働の上に経営があり、そこに資本が投じられるということだ。農業経営者や中小企業の経営者は、これらを同じ土俵で考えてしまう。労働者になって作業すること、経営者になって帳簿をつけること、資本家として投資をすること。それぞれ分けて考えれば、楽になる。今は何を優先するべきなのかの判断ができれば、少しずつ目標に近づいていけばいいのである。
これらを当社の成長ポリシーと考えている。時間軸では、過去から現在、未来に向かって一直線上につながっている。過去のことをしっかり記録して、現在を正確に把握すれば、より正確に未来が見える。未来の予測とは、作業計画以上に、事業を継続し、事業体が成長するためには欠かせない発想なのだ。
今後の展望としては、当社の強みを活かして農業の産業化に引き続き挑戦する。当社が独自に取り組む課題はあるが、それだけではない。
人も仕事も集まる仕組み作り
たとえば、鹿児島の志布志地域では、農家離れが進んでいる。地域の問題として、しっかりとした農業の受け皿を作ることが使命である。具体的には、若者が集まる仕組みであり、そこに仕事が集まってくるようにしておくことである。消費地から遠い、過疎・高齢化が進んでいるというのは弱みかもしれない。しかし、逆に考えることができれば、厳しい環境が経営を研ぎ済ませ、チャンスを与えてくれるのだ。
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坂上隆 サカウエタカシ
農業生産法人 株式会社さかうえ
社長
1968年鹿児島県生まれ。24歳で就農。コンビニおでん用ダイコンの契約栽培拡大を通して、98年から生産工程・投資・予算管理の「見える化」に着手。これを進化させたIT活用による工程管理システム開発に数千万円単位で投資し続けている。現在、150haの作付面積で、青汁用ケール、ポテトチップ用ジャガイモ、焼酎用サツマイモなどを生産、提携メーカーへ全量出荷する。「契約数量・品質・納期は完全100%遵守」がポリシー。03年、500馬力のコーンハーベスタ購入に自己資金3000万円を投下し、トウモロコシ事業に参入。コーンサイレージ製造販売とデントコーン受託生産管理を組み合わせた畜産ソリューションを日本で初めて事業化。売上高2億7000万円。08年から食品加工事業に進出。剣道7段。
坂上隆の幸せを見える化する農業ビジネス
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