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農水捏造 食料自給率向上の罠

TPP断固反対の農水省、“中国コメ輸出利権”等 自らの仕事づくりにも必死の様相


 農水省や民主党が言うように、農家の大半が赤字であることが本当であれば、どうやってこれまで事業活動を継続できたのか。農業は設備産業ゆえに、借金はあっても、農家は押しなべて黒字経営である。

 小規模な農家が多いと言われるコメでも、38%を主業農家(農業所得が世帯所得の半分以上を占める農家)が作っている。全国の約3万戸が、農業所得400万円弱だ。副業か自給的に稲作をする1ha未満の農家は110万戸以上あるが、生産割合は32%と主業農家を下回る。

 農業所得は赤字であっても、稲作副業農家の平均所得は700万円以上である。生活に困窮していない。勤労者の平均世帯所得550万円を大きく超えているのだ。

 これで、「自給率が下がっていいのか」とTPPに断固反対しながら、「自給率を下げる」減反に従順に賛成する人々の心理が読み解けるはずだ。米価さえ維持できれば、理由は何でもいいのだ。TPP反対運動とは自給率の美名のもと、自由貿易で米価が下がることを恐れる米価下落反対運動なのである。

 一方、稲作所得が500万円を超えるような稲作専業農家は、日本全国で約7000戸しかない。少数精鋭で水田面積の7%を耕作している。しかし、この数では、民主党の票田にはとてもならない。


農水省のコメ輸出事業のリスク

 昨年末に、筒井信隆副農相が訪中し、農水省は国有企業農業発展集団と日本米の中国向け輸出拡大で協議することで合意した。「早期に年間20万t、将来は100万tに引き上げたい」(筒井副農相)としている。農産物の輸出促進とマスコミでは肯定的にとらえられたが、とんでもない。農水省が国家貿易事業体として、コメの輸出事業に乗り出すということだ。2つの問題をはらむ。

 まず、民業圧迫だ。国が持っている日本米といえば、備蓄および米価を維持するために国内で買い上げたコメの在庫だ。安値で海外に大量に転売すれば、少しずつ民間の努力で増え始めている輸出事業を水泡に帰させる。この場合、納税負担が増える。逆に、買い値より高く売れれば、農水省の特別会計が膨らむ。

 風評面でも心配の種は尽きない。ずさんなコメの管理で悪評高い農水省が低品質のものを輸出し、中国で流通すれば、これまで築かれてきた高級な日本米のイメージが一気に崩壊する可能性もある。

 農水省の輸出米に狙いを定め、日本への敵対意識を鼓舞するために、「日本産毒米」(中国毒餃子事件の逆バージョン)事件をでっちあげられないとも限らない。民間のコメであれば、仮に事故があったとしても、原因が特定できれば問題は沈静化できる。しかし、国家貿易は徹底的に逆利用されるリスクが伴う。

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