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【新・農業経営者ルポ】
耕作放棄地で挑む大規模コマツナ産地づくり
- 農業生産法人 (株)ナガホリ 代表取締役 永堀吉彦
- 第82回 2011年02月28日
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耕作放棄地にはあらゆる夢が詰まっている
永堀吉彦が埼玉県川島町にある耕作放棄地に筆者を案内し、その土地に足を踏み入れた瞬間、明らかにその眼は輝き始めた。
耕作放棄地の広さは実に8.6ha。東京ドーム約2個分の広さだ。その日は、バーチカルハローやレベラーを使って整地作業が行なわれていたが、永堀は突然100m先で作業をするスタッフのもとに駆け出していき、指示を出し始める。
「圃場の起伏が少し激しかったので、声をかけたんですよ。この時点から土づくりをしっかり行なえば、いい作物ができますからね」
その動きは止まらない。「うちの市(埼玉県上尾市)の耕作放棄地にも案内しますよ」と車を走らせる。道中、永堀は幾度となく「あの畑もうちが開墾したもの」と指をさす。現在再生中の耕作放棄地は、草がぼうぼうに茂っていた表土を、重機で根こそぎ剥ぎ取った状態だった。作業するスタッフに「あと2日で整地できそうだね」と声を掛ける。スタッフが「綺麗にしてくれてと地主さんが喜んでいましたよ」と返す。永堀は「じゃあ、あっちの竹やぶも提供してくれないかなぁ」と笑った。
「耕作放棄地にいると、ウキウキしているように見えますね」
筆者が正直な感想を口にすると、永堀とスタッフは豪快に笑った。そしてスタッフがこう言った。
「社長は、コマツナを作っているよりも、耕作放棄地を開墾しているほうが好きなんですよ(笑)」
永堀は耕作放棄地を“宝の山”と表現する。農地に再生することで、より多くの収益が上げられることが、その喩えにつながっているわけだが、それがすべてではない。
川島町の耕作放棄地を案内してもらったとき、永堀は全体が見渡せる高台に立ち、筆者にこう話した。
「僕は、この地域を市場が認めるコマツナの一大産地にしたい。今うちには、20代の若手社員が7人います。彼らにはこの広大な土地を自ら運営できるような経営者になってほしいんですよ。そして一緒に夢を実現していきたいんです」
現在でも、永堀は時間が許す限り、自らパワーショベルに乗り、耕作放棄地を開墾している。レバーを操っているとき、その脳裏には、収益が上がる嬉しさだけではなく、若手社員が将来的に活躍する姿も思い描いているに違いない。だからこそ永堀は耕作放棄地の存在を重要視し、その拡大にまい進しているのだ。
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永堀吉彦 ナガホリヨシヒコ
農業生産法人 (株)ナガホリ
代表取締役
1945年埼玉県生まれ。埼玉県立熊谷農業高校卒業後、トマトを作る両親の家業に入る。72年買参人の免許取得。74年、市場で売れ残る野菜に目を付け直売所を運営。その後、産地間競争の隙間をついた野菜の生産に乗り出す。95年農業生産法人、(有)ナガホリを設立。耕作放棄地を活用しコマツナの大量生産・安定供給に乗り出す。03年株式会社に組織変更。農地面積は約50ha。売上高2億7,000万円。社員7名、パート約200名。尊敬する人物は武田信玄。
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