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編集長インタビュー

農薬事故で表面化した“直売所リスク”信頼を取り戻すためには何が必要か

今や全国に1万カ所以上あるといわれる農産物直売所。「生産者の顔が見える」売り場として人気は高まるばかりだが、安全面において、人的・構造的なリスクを抱えているのも事実である。千葉県の人気店「かしわで」で発生した登録外農薬の残留事故は、すべての直売所に対して、リスク管理のあり方を問いかけることになった。「かしわで」を運営する(株)アグリプラスの染谷茂・代表取締役に、事故発生の経緯と、顧客の信頼を取り戻すための決意を聞いた。

登録外農薬の検出により直売所の営業を停止

昆吉則(本誌編集長) 染谷さんは千葉県柏市で(有)柏みらい農場を経営する一方で、2004年より地元農産物の集荷・販売を行なう(株)アグリプラスを立ち上げ、「かしわで」という直売所をオープンさせました。200名を超える生産者の農産物を取り扱い、連日多くの利用客で賑わう人気店になりましたが、残念なことに10年12月に商品から基準値を超える農薬が検出されました。今日は経営者としての反省の弁をうかがうと同時に、再起にかける思いをお聞きしたいと思います。まずはことの経緯を聞かせていただけますか。

染谷茂((有)柏みらい農場代表取締役・(株)アグリプラス代表取締役) おっしゃる通り、柏市保健所が食品衛生法に基づいて検査を行なったシュンギクから、基準値を超える殺虫剤「メチダチオン」が検出されました。それをきっかけに自主検査を行なったところ、ほかの生産者のシュンギクからも別の登録外農薬が検出されました。

昆 出荷したのはどんな方ですか。

染谷 主に直売所向けの農産物を作っている年配の方です。最初に検出されたのは花農家で、散布機の中に花用の薬剤が残っており、その後に使った作物についてしまいました。

昆 それで今回の事故に対して、役所からはどんな指示があったのでしょう。

染谷 商品を回収し、店内に事故の内容を告示しなさいと。

昆 同時にメディアにも報道されました。売上に対する影響は?

染谷 事故発生直後に10日間ほど営業を自粛したこともあり、昨年度に比べてやはり落ちていますね。

昆 問題のシュンギクを出荷した方には、どんな対応をとられたのでしょう。

染谷 出荷停止です。

昆 ペナルティーがあるということを、ほかの農家にも理解してもらわないといけませんからね。

染谷 ただ、これは事故を起こした者だけの問題ではなくて、すべての農家に可能性があることだと思っています。

農薬事故が発生する人的・構造的な原因

昆 今回の事故は、日本中の農産物直売所が抱える構造的な問題を浮き彫りにしたと感じています。

染谷 少量多品目栽培ならではの問題が大きいですね。まずひとつは農薬の濃度です。専業農家が市場向けに大量出荷する場合は、同じ農薬を大量に作って、使い切って終わりです。ところが直売所向けの野菜は、一枚の圃場で複数の品目を作付けているのが普通です。それに対して、例えば1000~2000倍の農薬を10リットルだけ作るとなると、原液は1ccに満たないこともある。年配の人たちがきちんと1ccを計って薬剤タンクに入れて作るかというと、現実は難しいものがありますね。

昆 隣の野菜にかかってしまうドリフト問題も起こりやすいでしょう。

染谷 ええ。今回の原因のひとつもドリフトでした。風がないと思って撒いていても、いきなり風が吹いて隣の作物に飛んでしまうと、登録外の農薬を使ったことになってしまいます。

昆 農薬をいかに慎重かつ適切に扱うかという意識が問われます。

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