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【編集長インタビュー】
農薬事故で表面化した“直売所リスク”信頼を取り戻すためには何が必要か
- 柏染谷農場 染谷茂
- 第79回 2011年02月28日
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登録外農薬の検出により直売所の営業を停止
昆吉則(本誌編集長) 染谷さんは千葉県柏市で(有)柏みらい農場を経営する一方で、2004年より地元農産物の集荷・販売を行なう(株)アグリプラスを立ち上げ、「かしわで」という直売所をオープンさせました。200名を超える生産者の農産物を取り扱い、連日多くの利用客で賑わう人気店になりましたが、残念なことに10年12月に商品から基準値を超える農薬が検出されました。今日は経営者としての反省の弁をうかがうと同時に、再起にかける思いをお聞きしたいと思います。まずはことの経緯を聞かせていただけますか。
染谷茂((有)柏みらい農場代表取締役・(株)アグリプラス代表取締役) おっしゃる通り、柏市保健所が食品衛生法に基づいて検査を行なったシュンギクから、基準値を超える殺虫剤「メチダチオン」が検出されました。それをきっかけに自主検査を行なったところ、ほかの生産者のシュンギクからも別の登録外農薬が検出されました。
昆 出荷したのはどんな方ですか。
染谷 主に直売所向けの農産物を作っている年配の方です。最初に検出されたのは花農家で、散布機の中に花用の薬剤が残っており、その後に使った作物についてしまいました。
昆 それで今回の事故に対して、役所からはどんな指示があったのでしょう。
染谷 商品を回収し、店内に事故の内容を告示しなさいと。
昆 同時にメディアにも報道されました。売上に対する影響は?
染谷 事故発生直後に10日間ほど営業を自粛したこともあり、昨年度に比べてやはり落ちていますね。
昆 問題のシュンギクを出荷した方には、どんな対応をとられたのでしょう。
染谷 出荷停止です。
昆 ペナルティーがあるということを、ほかの農家にも理解してもらわないといけませんからね。
染谷 ただ、これは事故を起こした者だけの問題ではなくて、すべての農家に可能性があることだと思っています。
農薬事故が発生する人的・構造的な原因
昆 今回の事故は、日本中の農産物直売所が抱える構造的な問題を浮き彫りにしたと感じています。
染谷 少量多品目栽培ならではの問題が大きいですね。まずひとつは農薬の濃度です。専業農家が市場向けに大量出荷する場合は、同じ農薬を大量に作って、使い切って終わりです。ところが直売所向けの野菜は、一枚の圃場で複数の品目を作付けているのが普通です。それに対して、例えば1000~2000倍の農薬を10リットルだけ作るとなると、原液は1ccに満たないこともある。年配の人たちがきちんと1ccを計って薬剤タンクに入れて作るかというと、現実は難しいものがありますね。
昆 隣の野菜にかかってしまうドリフト問題も起こりやすいでしょう。
染谷 ええ。今回の原因のひとつもドリフトでした。風がないと思って撒いていても、いきなり風が吹いて隣の作物に飛んでしまうと、登録外の農薬を使ったことになってしまいます。
昆 農薬をいかに慎重かつ適切に扱うかという意識が問われます。
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染谷茂 ソメヤシゲル
柏染谷農場
1949年千葉県柏市生まれ。68年に高校を卒業後就農。一度会社勤めに転向したが、約3年の工場勤務の後、再び農業の世界に戻る。2003年、利根川沿いに広がるゴルフ場予定地の圃場開発を引き受け、(有)柏みらい農場を発足させると同時に代表取締役に就任。100haを超える圃場で大規模な土地利用型農業を展開し、水稲、麦、大豆、ジャガイモ等を生産する。04年、生産地であると同時に消費地でもある柏の立地を活かし、有志の生産者と共に農産物直売所「かしわで」をオープン。同店を運営する(株)アグリプラスの代表取締役も務める。 http://www.kasiwade.com/
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