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編集長インタビュー

農薬事故で表面化した“直売所リスク”信頼を取り戻すためには何が必要か



染谷 そうですね。出荷してくる生産者には戦前もしくは終戦直後生まれの世代が多いのですが、農薬万能時代を経験しているせいか、薬剤を慎重に扱う意識が高いとは言えません。あんなものは手でかきまぜていたという人がたくさんいるんです。これまでも大丈夫だったから問題ないだろうと。残念ながらそういう人たちは、現在の農薬取締法に対応するのが難しい。登録がとれているか、希釈倍率はどうか、収穫前日数の制限はあるのか、そういった条件を理解した上で農薬を使用し、なおかつ記録も残す。その指導を徹底すべきだったと反省しています。

昆 経営者としての責任ですね。

染谷 はい。売上が年を追うごとに伸びていく反面で、生産者に対する指導が疎かになっていました。これからは会社として管理を徹底しなければならないと痛感しています。

信頼をいかに取り戻すか再起にかける想い

昆 しばらく営業を自粛したということですが、その間にどんな改善策に取り組んだのでしょうか。

染谷 まず、すべての農家を集めて研修会を開きました。そして改めて農産物の栽培履歴を提出してもらい、履歴の記載が不十分なものは弾いていきました。残ったものについては圃場確認です。畑の様子を視察すると同時に、本人の農薬に対する意識、農薬の保管状況などを確認し、この農家は大丈夫だと判断したら、その農家の作物について残留農薬検査を実施しました。そこまでチェックして問題のなかった商品を集め、営業を再開しました。

昆 研修会ではどんなことをやったのですか?

染谷 保健所と、県の安全農業推進課の農薬担当者を招き、農薬の取り扱いについて講習を受けました。こうした研修会はこれからも繰り返し行なっていこうと考えています。人はどうしても忘れてしまうものですから、一人ひとりの意識が薄くなってきた時に改めてやる。そうでないと、少しくらいいいだろうという油断が生まれる恐れがあります。

昆 それは大切なことですね。以前にタケノコの品質でクレームが出て、茨城県の篤農家である高松求氏のところに研修に行ったら、品質が上がり、農家の意識や意欲も変わったという話をお聞きしました。あれと同じことが起きるのではないかという気がします。

染谷 タケノコといえば放っておいた竹山からでも勝手に生えてきますが、高松氏はあくまで「栽培」する感覚で竹山を管理しています。何でもいいから売ってしまえという発想ではなく、自分が責任を持って育てた作物を、相手に喜んで買っていただけるかどうか。高松氏のところに行って、タケノコの出荷者がそれに気付いてくれたんです。翌シーズンはタケノコに対するクレームがゼロになりました。

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