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【江刺の稲】
シンポジウム参加への御礼
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第180回 2011年02月28日
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1月29日に開催した本誌主催のTPPシンポジウムにはたくさんの読者の皆さまにご参加いただき、心より御礼申し上げます。実際のところ、開いてみるまでどれだけの方にお越しいただけるか分からず、ヒヤヒヤの開催でありました。スタッフたちは「社長! また思いつきでそんなこと言って、また赤字の原因を作るのですか!? あなたは運動家ではなく経営者なのですよ。それで読者に示しが付くのですか?」などとなじられ、そのために立派な会場も借りず、事務所の大家さんにお願いしてビルの開いているフロアをお借りしての開催でした。会場の真ん中に大きな柱が立っていたりして、ご参加いただいた皆さまにもご不便をおかけいたしましたが、その貧乏臭さが農業経営者編集部らしくて会の盛り上がりとともに私としてはうれしく思いました。
心配をよそに200名近い方々にご参加いただきました。有り難いことでした。雪国からは上京するにも不便があったような日でしたが、北海道、北陸、九州など全国各地から読者にご参加いただきました。そして、参加していたあるメディア関係者は「農家でもこんな内容で全国各地から集まるのですね」などと、農業経営者の民度に対する偏見を素直に語るような人もいましたが、彼らはあらためて我が国の農業経営者たちの存在を理解したようです。
農地を借り、水利を共有し、同じ農協組合員として暮らし、しかも行政や農協は総じて「TPP絶対反対!」などと叫ぶ中にいる農業経営者の立場。それは現代の日本の社会にいても都会で事業を営む経営者とは異なる境遇にいることを参加したメディア関係者も理解したと思います。それに、事業として農業を営む皆さまはともかくも、兼業収入で暮らすほとんどの農家たちこそ自由化が進まないことで産業空洞化が進み失業の危機にあるわけで、本当は彼らこそ率先して「TPP賛成」を叫ばなくてはいけないのにネ。
だからこそ、読者の多くがTPPなどによって何らかの経営的打撃を受けるかもしれなくても農産物の貿易自由化の波に負けずに頑張っていこうと語る姿に、記者たちは驚きとともに感激していたようです。
シンポジウムのタイトルは、「農業は日本のお荷物などではない 私たち農業経営者はTPPを恐れない~日本農業の敗北主義を超えて~」でした。中身も検証することもなくとにかく自由化反対を叫ぶ農水省、農業団体。自らの頭や生き方から考えるのではなく、偉い人が言っているからそれに従って踊らされている気の毒な人々。そして、自分の考えを持っていてもそれを語れない、隔離された農業界の精神風土。もう、うんざりですね。
私たちは、自由化による困難があるとしても、それを超えて日本農業や農村の可能性を見出していこうとしているのです。
現在の自由化論議は、賛成派も反対派も「農業が日本のお荷物である」という前提で語られています。しかも、それに反対する人々の本音とは、そうした日本農業の敗北主義が前提の利権を失いたくないのです。
何度となく申し上げてきました。農業問題とは農業関係者問題なのです。彼らの居場所作りのために農業問題が創作され続けているのです。それを正し、真に誇りある日本農業を創造し、農村も含めて農業が、そして農業経営者たちが日本という国をけん引していく時代が始まろうとしているのです。
皆さん、今年が正念場です。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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