ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

農水捏造 食料自給率向上の罠

日本の自由化度の低さはTPP参加以前の問題

TPP参加についての話題。賛否を議論するにあたって、貿易と関税の基礎知識は十分あるのだろうか。事実が意外と盲点になっている。自由化への諸外国の取り組みはどうなっているのか。例外品目はどのくらいあるのか。読み解いていくと、農業問題がクローズアップされた理由が隠されている。

 TPP参加について賛否両論が白熱する中、農業の自由化の是非が議論になっている。その議論を深めるために、基本事実をきちんと整理する必要がある。そもそも貿易の自由化とは何を指しているのか。そして農業がなぜいつも自由化のネックとして語られるのか。


貿易の自由化とは何か

 まずは、貿易と関税の基礎知識から。この世に存在するありとあらゆるモノは交易される可能性がある。しかし、国によって同じモノでも呼び名が違ったり、その名が示す範囲が異なったりしては、何が輸出され何が輸入されているのかお互いわからなくなる。

 そこで森羅万象を整理し、一定の品目数に区分けされ、共通した番号が割り振られることになった。HSコードと呼ばれるもので、モノの名称と分類を世界的に統一し、国際貿易を円滑に行なう目的のためだ。

 その数は9000番号に及ぶ。この中に、石油からプラスチック、医薬品から農薬、コメから錦鯉、美術品から武器まで、ありとあらゆる商品が含まれている。海外から輸入されるディア社のトラクタやアップル社のipadといった個別商品もすべてこの番号のどこかに入る。そして、貿易時に課される税金──関税はこのコード別に何%(従価税の場合、一部キロあたり何円といった従量税もある)かが決まっている。

 ここまでわかれば貿易の自由化とは何か、すぐわかる。単純化すれば、この9000品目の関税を撤廃していく過程のことだ。

 その究極の状態が「完全な貿易自由化」だ。この9000品目すべての関税がゼロの状態を、品目ベースの「自由化率100%」と呼ぶ。

 逆に9000品目すべてに関税が課されている状態が自由化率0%だ。そんな国はないから、すべての国と地域の自由化率はゼロと100の間のどこかにある。

 では、日本の自由化率は何%なのか。ほかの国と比べて高いのか、低いのか。

 それを知るには、自由貿易協定(以下、FTA)においてどの国がどれだけ自由化率(今は関税がかかっていても、一定期間、通常10年以内に関税撤廃する品目も含む)を実現しているかを調べればわかる。日本はこれまで11カ国とFTAを結んでいる。締結順に国名とその国に対する自由化率を列挙してみよう。

 シンガポール(84.4%) 、メキシコ(86.0%)、マレーシア(86.8%)、チリ(86.5%)、タイ(87.2%)、インドネシア(86.6%) 、ブルネイ(84.6%)、フィリピン(88.4%)、ASEAN(86.5%)、スイス(85.6%)、ベトナム(86.5%)だ。

 最低がシンガポール84.4%で最高がフィリピン87.2%である。ざっくり平均すれば、日本には9000品目のうち15%ほどは関税撤廃していない。自由化率が高いと思われるかもしれないが、他国はどうか。

関連記事

powered by weblio