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和郷園の一軒一軒の農家は生産に専念できる。家族経営を選択する限り、経営を次の世代、さらにはその次の世代へと持続的に発展させるためである。1家族農家あたりの売上としては、1億円という目標を提案している。家族経営で子供を後継者として確実に育てられる経営規模の目安だ。
これぐらいの基盤があれば、親は自然と農作業をやらせることを教育方針に掲げられ、自信を持って子が幼い頃からイモやニンジンに触れる機会を与えさせられる。成長し、大人になったときに、幼い頃からのこういった経験が経営者の発想としての原点となる。経営として家族農業が発展する鍵は、この循環を回していくしかないと考えている。
流通、サービスの部分まで作って10億円売上げても、せいぜい残るのは2000万円である。作るだけに専念して、売上1億円を目指して2000万円を得れば、豊かに続けられる。餅屋は餅屋、まさにそのことだ。
農場をつなげる人材の育成
一方、販売側の企業経営の後継者は農業の遺伝子でない方がいい。むしろ、流通の遺伝子を持ち優れたアイディアを出せる人間が適任であろう。たとえば、流通業界などからヘッドハンティングしてくると、農業界で育った私から見ると50%しかでき上がっていない。そこで、その人間に農業を学ばせるのだ。残りの50%を育てるのは農の環境しかない。流通のDNAから、今度は農業の方に持っていくという具合だ。
さらに将来的には、生産に専念したい農家がお互いの強みを活かして合併するという動きが増えるのではないかとみている。
今後は、生産と流通に加えて、企画力やまとめる力を併せ持った事業運営が必要になってくる。とはいえ、農業者それぞれが持つ得意分野は様々である。経営の資質、営業のセンス、職人的な生産のプロなど、長所も短所も持ち寄る。足りないものを補完すれば、強い経営を生み出していけるというわけだ。
自立した農業経営者同士が集まれば、今度は誰がその合併した事業体をまとめるかが課題になる。そこで、必要とされるのは、事務局やマネージメントという形で農場をつなげられる人間である。
ここで和郷が活きてくる。組合員農家の子弟や、和郷のスタッフの中から、農場管理から営業、総務、あらゆる形で行動できる人材を育てていく。和郷の中期的戦略として、こうした次の世代を担ってくれる人への投資に、これからも積極的に力を入れていこうと思う。
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木内博一 キウチヒロカズ
(有)和郷、生産組合(農)和郷園
代表理事
1967年千葉県生まれ。農業者大学校卒業後、90年に就農。96年事業会社(有)和郷を、98年生産組合(株)和郷園を設立。生産・流通事業のほか、リサイクル事業や冷凍工場、カット・パッキングセンター、直営店舗の展開をすすめる。05年海外事業部を立ち上げ、タイでマンゴー、バナナの生産開始。07年日本から香港への輸出事業スタート。現在、ターゲット国を拡大準備中。起業わずか15年でグループ売上約50億円の農系企業を築き上げた木内氏の「和のマネジメントと郷の精神」。『農業経営者』での連載で、その“事業ビジョンの本質”を初めて明かす。
木内博一の和のマネジメントと郷の精神
起業わずか15年でグループ売上約50億円の農業ビジネスを築き上げた“農業界の革命児”木内博一。攻めの一手を極める氏の経営戦略と思考プロセスを毎月、明かしていく。
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