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【土門「辛」聞】
情報開示必要なTPP参加問題、国民は正しい判断ができぬ
- 土門剛
- 第80回 2011年02月28日
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環太平洋経済連携協定(以下、TPP)への参加――、わが政府は、「幕末、戦後に次いで第三の開国」(菅直人首相)と位置づけて国民に理解を呼びかけている。その割には、政府の説明はズサン極まりなく、国民へTPPの賛否を下すのに必要な情報が十分に提供されていない。
政府の公式情報では一括りに「包括的経済連携協定」と表現
TPPについての基本的な公式情報は、国家戦略室のホームページに掲載されている。いずれも菅首相が、2010年10月1日の衆参両院本会議の所信表明で「外交では環太平洋戦略的経済パートナーシップ(TPP)協定交渉などへの参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指す」と述べたことを受けて、国家戦略室が中心となって内閣が急遽取りまとめたものである。
▽「包括的経済連携に関する基本方針(日本語版、英語版)」▽「包括的経済連携に関する閣僚委員会」▽「包括的経済連携に関する資料」
そのタイトルに着目していただきたい。TPPという名称ではなく、あくまで「包括的経済連携」という表現になっている点である。TPPは、経済連携協定(以下、EPA)、自由貿易協定(以下、FTA)と同じ括りにしている。この名称の使い方から、TPPは市場開放の選択肢の一つとして説明されている。
最後の「包括的経済連携に関する資料」には、内閣官房が作成した「包括的経済連携に関する検討状況」、「EPAに関する各種試算」、「EPA関係資料集」の各資料に、それを補足する形での経済産業省と農林水産省が作成した試算の合計5点がある。これらの試算は、すべて関税格差を最終的に撤廃した場合の影響を説明したものである。
本論に入る前に、世界貿易機関(以下、WTO)交渉も含めた市場開放交渉全般について簡単に整理しておこう。FTA、EPAについては、日本貿易振興機構(ジェトロ)のホームページに分かりやすい説明文があるので、引用してみた。
【FTA】2カ国以上の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障害などを削減・撤廃する協定。
【EPA】2カ国以上の国や地域の間で、FTAを柱に、ヒト、モノ、カネの移動の自由化、円滑化を図り、幅広い経済関係の強化を図る協定。
次いで、TPPとWTOについても説明しておこう。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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