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土門「辛」聞

情報開示必要なTPP参加問題、国民は正しい判断ができぬ


「李大統領は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加について『APECの国々が自由貿易の方向に向かっており、どの国も(TPPを)検討している。韓国もその一つだ』と述べた。李大統領はTPPについて『象徴的な効果はあると思うが、実質的な効果はわからない』と慎重な姿勢を見せつつも、参加の検討を始めたことを初めて明らかにした」
 実に外交的ウィットに富む答えぶりではないか。TPP参加の世論誘導に熱心な船橋氏や朝日新聞の立場に配慮しつつ、韓国政府としての立場を明確に示すことを忘れなかった。ところが朝日新聞の見出しは、「韓国、TPP参加を検討 李大統領」となった。記事は、彼らの主張に都合のよい部分のみをつまみ食いして、李大統領発言の真意を完全に無視している。しかも李大統領が述べたTPPに対する「実質的な効果はわからない」とした回答について、なぜか船橋氏は、その理由を質問していない。国民が知りたいのは、まさにその点なのである。

 冒頭に説明したように、現時点でTPP関連の資料は、TPP原加盟4カ国が締結したP4協定しかない。この協定は、前文と20章から成り、メディアがよく取り上げる物品の関税は、わすか3、4章程度しか割かれていない。この条文構成をみるだけでも、単なる市場開放ではないことがすぐに分かる。しかも市場開放の対象が、サービス貿易、政府調達、競争、知的財産、人の移動などと広範囲に及んでいる。

 これらは別段目新しいものではない。20年ほど前には日米構造協議というのがあった。現在も、94年から始まった「年次改革要望書」がある。特に後者の中には、今回、P4協定の中に盛り込まれたものと内容がほぼ共通するものが多い。その要望書で米国が求めて具体化したものは、建築基準法の改正、法科大学院の設置の実現、独占禁止法の強化と運用の厳密化、労働者派遣法改正、郵政民営化などである。

 米国主導の新たなTPPは、「年次改革要望書」などの系譜を受け継ぎ、現行P4協定をさらに肉付けしたものになることはほぼ明らかである。それらが、日本の経済や社会に与える得失について、われわれ日本国民はもっと慎重になって考えても良いのではないだろうか。特に農家には、市場開放後の戸別所得補償についての内容が何も明らかにされていない。TPP参加の決断は、これら情報がすべて開示された後でも決して遅くはないのだ。

【お詫び】筆者の都合で急遽内容が変更になりました。次号以降に農産物の市場開放問題の続編をお送りします。

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