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【人生・農業リセット再出発】
たまには各駅停車の人生もいいもの……
- 作家 元国際線乗務員 黒木安馬
- 第123回 2011年02月28日
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近江商人と聞けば、幼い少年が天秤を担いで鍋蓋を売り歩くが、ひとつも売れずに途方にくれる映画『てんびんの詩』を思い出す。早朝から深夜まで商いに精を出す“気張る”、商売の実態に応じた支出と質素倹約“始末”のふたつの心得で、豪商を多く輩出した。商人だけが儲けるのではなく、お客様にも満足してもらい、常に社会にも貢献する“三方良し”の哲学は、この近江商人を発祥としている。信用第一、物不足に便乗した値上げは厳しく戒め、人から愛され、橋の架け替えなど積極的な寄進を心がけた。成功しても初心を忘れることがないようにと、店の片隅に天秤棒を掛けておく“千両天秤”は今も残る。
古事記では琵琶湖一帯を近淡海、後に江州と呼び、それが近江になる。ここに安土城を築いた織田信長、その妹を妻にした地元の戦国武将、浅井長政。その三女であり、徳川二代将軍秀忠と結婚して三代将軍家光を生む女の一生を描いたNHK大河ドラマ、『江』の名前はここから来ている。
その近江で講演することになり、いつも米原や彦根など新幹線で素通りばかりしていたから、一日早めに出かけて、初めての近江八幡を散策した。有名な近江牛の知識ぐらいしかなく、どこに行くあてもなくホテルのフロントで観光名所を聞く。琵琶湖が見渡せる八幡山ロープウェイや八幡堀などを説明され、ヴォーリズ建築はお勧めですね、と言われる。ヴォーリズ? 聞いたことのない名前だった。車で送ってもらった先には、少女が花を手にして西洋人の紳士に渡そうとしている銅像が立っていた。その道路向かいには「近江兄弟社」の看板がかかるビルがある。少女のナース姿のマークで気付いたが、そこは懐かしのメンソレータムの本社だった。中で説明を見ているうちに、近江兄弟社の創業者がヴォーリズだと知る。
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黒木安馬 クロキヤスマ
作家 元国際線乗務員
高校時に米国留学後、早稲田大学を経てJAL国際線客室乗務員として30年勤務。世界初の「カラオケ・フライト」や「1万メートル上空・北島三郎機上コンサート」などを実現させる。千葉の自宅は1300坪の山林を開墾してプール、テニスコート、コンサートホール等を手作りする。現在、(株)日本成功学会社長として自己啓発や社員教育で講演中。著書に『成「幸」学』(講談社)、『あなたの人格以上は売れない!』(プレジデント社)、『出過ぎる杭は打ちにくい!』(サンマーク出版)、『面白くなくちゃ人生じゃない!』(ロングセラーズ)、『リセット人生・再起動マニュアル』(ワニブックス)、『小説・球磨川』(上下巻・ワニブックス)などがある。 E-mail:yasuma@myad.jp URL:http://www.3percent-club.com
人生・農業リセット再出発
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