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【江刺の稲】
農業の枠を超え農村経営者を登場させよ
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第181回 2011年05月17日
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東日本大震災そして福島原発事故。それは被災した人々に降りかかった困難と悲しみだけでなく、日本にとっても未曾有の国難をもたらしている。あらためて被災された方々にお悔やみとお見舞いを申し上げる。
被災地区の人々の悲しみの深さがどれ程のものであるかは筆者の想像を超える。360度の視野で見渡す限りに瓦礫が広がる被災地。ここに人々の暮らしや緑なす農地があったのだと思うと、語るべき言葉が出てこない。最愛の家族を含めあまりに多くのものを失い、自らを育んだ風土や人々の絆をも捨て人生をリセットせねばならない人々もいるだろう。これからの復興の過程での様々な困難……。
福島、宮城両県では少なからざる読者の消息が不明である。福島県のある読者は、原発事故に伴い避難を余儀なくされ、農業経営からの撤退と購読中止を仙台の親戚の家からだとご連絡いただいた。電話が通じるようになると、震災地の読者だけでなく、福島原発による風評被害に苦しめられる福島や近県の読者からの電話やメールを頂いた。
読者の皆さまから寄せられる話を聞けば聞くほど、東京に居ても筆者自身の中でも何かが壊れていくような思いに襲われていた。正直に申し上げれば、農業経営者の誇りを擁護し励ますことを目的としてきた『農業経営者』という雑誌を続けていくことへの勇気すら失いかけた。
それでも、現在の悲しみと困難をあがなえるものは、新しい未来を作ること以外にはない。失ったものはあまりにも大きい。しかし、東日本大震災と津波そしてまだ行く末が見えない福島原発事故という国難は、農業・農村の変革を阻んできた様々な障壁を突き破るきっかけになるだろう。復興と新しい農業・農村作りを中核となって果たしていくのは農業経営者であり地域を経営する農村経営者としての読者たちだ。
今回の災害復興に向けて農業経営者の果たすべき役割と震災からの復興を未来の創造につなげていくために幾つかの提案をしてみたい。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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