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ですから、私たちがふだん生活をしている状態で、放射線がゼロになることはありません。私たちは、つねに自然界からの放射線を浴びているのです。その量は、世界の平均で一人当たり、1年間に約2.4ミリシーベルト(Sv)です(図3)。
Svというのは放射線の人体への影響を評価するための指標です。先述したように放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線などいろいろな種類があって、それぞれ人体への影響も異なります。そこでSvに換算すると、結局どのくらい影響を受けているのか、すぐに評価することができます。放射線の影響は、放射線の種類や放射線を受けた臓器の種類により変わります。それらを考慮して計算した値です。千分の1をミリ(m)、百万分の1をマイクロといいます。これでミリシーベルト(mSv)、マイクロシーベルト(マイクロSv)のようにつかいます。
日本の1年の平均は約1.5mSvですが、海外ではもっと高いところもあります。たとえばブラジルのガラパリでは、年間10mSvの放射線を自然界から受けています。また、地域だけでなく時代によっても変化しています。世界各国で大気圏核実験をしていた1860年代は、今より大気中の放射能濃度がはるかに高かったので、当時の日本で生産されたコメやムギの放射能は現在よりだいぶ高かったようです(図4)。また図4によれば、80年代に一時的にセシウム137による放射能がピークになっています。これはチェルノブイリ原発事故の影響といわれています。図4の中で使われているベクレル(Bq)は放射線を出す能力、すなわち放射能の大きさを示す単位です。この数値が大きいということは、それが放射線を多く出しているということです。もっとも、チェルノブイリ原発事故後のようなピーク時でも日本で問題になるレベルには達していなかったとされています。
【体中に放射性物質が入らないようにする】
放射線や放射能が「見えない恐怖」などといわれるのは、放射線も放射性物質もとても小さくて見えないからです。そして、放射線はエネルギーが大きく、いろいろなところを突き抜けることができるからです。
でもその作用は、放射線によって違います(図5)。アルファ線は、突き抜ける力が小さく紙1枚でさえ、突き抜けることができません。一方、放射線の中で、突き抜ける力が大きいのはガンマ線です。ガンマ線は、紙も木も通り抜けてしまい、それを遮断するには、鉛の板などが必要です。X線も突き抜ける作用が大きいので、レントゲン検査では、その性質を利用して体の中を見ています。レントゲン写真を撮るときに重たいベストを着たことのある人もいるのではないでしょうか。あのベストには鉛が入っていて、放射線が体内に入るのを防いでいます。
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