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特集

東日本大震災から2カ月 農業経営の再建、そして復興へ——


 破損した乾燥機8台と籾摺り機などを、新規に調達するとなると約3000万円位は必要だ。現在、メーカー側の担当者と直接交渉して、今年の秋にはライスセンターが稼動できるように、修理するものと中古での調達を含めて復旧の方法を検討しているという。

 ライスセンターの一角には、相当な数の工具や溶接機などが置かれたガレージがある。取材時には、その外で育苗ハウスに育苗箱を並べる作業が急ピッチで進められていた。その際に使っていた4列並べの苗箱並べ機は、震災時に物が落下して下敷きになり、苗を滑らせるフレームが折れていたとのこと。よく見ると折れたフレームを一度切断し、溶接修理してコーキング剤で埋めてある。平時から機械の修理を自前でする技術がある農場は、このような天災にも強いということだろう。もっとも本人にとっては、ことさらに特別なことではない。

 「なんでも自分でするのが好きだからやっているだけ。もちろん、経費的な理由もあるけどね。なんだか立派な経営者みたいに書いてくれるなよ」

 取材した4月16日現在、伊藤氏が気にしていたのは、いかにして用水路の補修を間にあわせるかという問題だった。ハウスに育苗箱を並べているのに、そこに灌水するスプリンクラの水が、まだ用水路に通水していない。60haの水田用の育苗箱だから相当量の水が必要だ。ただし、この辺りは2008年の岩手・宮城内陸地震の被災地でもある。3年前の教訓から、用水路が復旧しない場合も水が使えるように近所に溜池を造成してあった。いざとなればローリータンクで水を運ぶ手順もある。

 「地震は天災。誰が悪いということもない」

 その言葉通り、伊藤氏は誰かを責めるわけでもない。粛々と復旧のなかに、春作業が進められていた。


※お詫び
福島県の農業経営者についても取材しましたが、原発事故の影響で経営環境が取材時と時々刻々と変わってきたため、さらなる取材を行なった上、次号にて掲載いたします。


農業生産資材関連企業の震災後の動き

震災は農業生産資材を扱う企業も襲った。工場の操業停止がその最たるものだが、どの業界も甚大な被害を受けている。農業機械、肥料、農薬の各団体に現状を聞いた。

●農業機械
社団法人日本農業機械工業会 大湯孝明専務理事

【自動車産業ほどの支障は生じていない】

 青森県のメーカーで仙台空港近くに営業所を構えていたところが建物ごと津波で流された。大手4社は春商戦に向けて各営業所に部品の在庫をしていたが、被災地ではすべて流された。ある営業所では被害額が10億円に上るという。

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