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【土門「辛」聞】
コメの需給調整が機能しない 大災害時に露呈した構造問題
- 土門剛
- 第81回 2011年05月17日
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大震災と福島第一原発事故のダブル・パンチに見舞われた日本列島。農業現場へも深刻な影響を与えている。何よりも原発事故は、春の出荷シーズン最盛期の福島や関東の各産地を混乱に陥れた。その裏で「チャンス到来」と腕まくりする産地もある。被災地から遠い北海道や西日本の産地だ。あらためて日本列島は南北に長いことを思い知らされる。
被害は、津波が襲った太平洋岸の産地だけではない。地震の揺れが強かった内陸部も深刻な打撃を与えている。地震の大きな揺れで水利施設やなどが損壊したのだ。4月25日時点で新聞各紙が報じた各地の主な被災状況をまとめてみた。
【岩手県】海岸沿いの堤防10カ所のうち4カ所が全壊。田んぼに水をためるための畦畔が津波で壊れたり、地割れなど農地への被害は1038カ所、排水施設の損壊は31カ所に上る。(4月23日付け共同通信ニュース)
【宮城県】農地や農業用施設で被害を受けた2160カ所のうち、津波が原因だったのは104カ所。(同)
【福島県】農地1084カ所、水路708カ所、ため池694カ所などが被害を受けた。「現段階では調査中で、さらに積み上がる」(県農林水産部)としている。(同)
【茨城県】県内の作付面積7万7000haのうち、液状化などにより田植えの時期を遅延せざるを得ない水田が51.1%に及んでいるという。特に、稲敷市は8割、県北地域と県南地域は7割で遅れが予想される。(4月21日付け毎日新聞)
【千葉県】農業用水を汲み上げる施設や用排水路の破損などで市内の水田の3割を超える2500haの作付けが不可能となった。(4月15日付け全国農業新聞)
今回の大震災・原発事故は、東北や関東のコメ主産地を襲っている。今年のコメ生産と流通にどう影響するか、考えてみたい。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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