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新・農業経営者ルポ

通勤農業が生み出した創意工夫とipad活用術


 設置は6年前とのことで、決して早いというわけではない。たとえば農場のホームページを訪れた人に「うちの田んぼの様子です」という具合に、圃場を観察するライブカメラを導入している農場は少なからずあった。しかし、定点観測型で5分ごとに更新される、ズームアップができない、夜間は真っ暗なままでもあり、圃場管理というには機能的に物足りないものといえる。

 その点、細木が導入したライブカメラは、360度回転する。ズームアップも可能で、ズームを最大にすると土の表面の湿り具合やショウガの葉脈まで詳細に観察することができる。さらに、自宅にあるパソコンから遠隔操作でライトを点灯できることから、闇夜でも雨や用水路の状態など、用水路の様子を監視するだけでなく、自作の簡易雨量計を設置し、そのメモリをカメラで読み取ることで常に畑に降り注ぐ雨の様子をチェックしている。これも、細木ならではの創意工夫だろう。

 また「出勤」の前に畑の様子を観察できるメリットは大きい。

 「畑の湿り気が多いときに畑に入ると、土を練ってしまってよくありません。監視カメラで土の湿り気もわかるので、行ってみたら作業ができなかったということを避けられる」 つまり無駄骨を折らずに済む。

 ライブカメラ導入費用は工事代、部品・機材代等で約80万円。これをリースにして月賦で支払った。その後再リースをしたが、リース料が年額1万8000円に下がり、これ以外にかかるのはインターネットの接続料金のみ。「充分に元は取れていますね」と細木は笑う。


最新商品を入手するため早朝に電気店に並んだ

 圃場のライブ映像を見るうえで、細木が最近凝っているのが、あの「ipad」だ。ご存知ない方に簡単に説明するが、タブレット型パソコンと呼ばれるもので、キーボードではなくディスプレーに触れて操作できる。ノートパソコンよりも軽量(730g前後)で非常に持ち運びやすいのだ。

 「どこにいてもリアルタイムで畑の様子を監視できるツールが欲しいと、ずっと思っていました。以前は携帯電話で監視していたのですが、携帯の小さな画面では土の湿り気まではわかりません。iphoneもいいと思いましたが、もう少し画面の大きいものが欲しいと思っていたところでした」

 ipadが発売されたのは昨年5月。発売の話を耳にした瞬間、細木は「これだ!」と確信した。高知県で店頭販売するのは1店舗のみ。売り切れを心配した細木は、早朝5時に一番乗りして買い求めた。

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