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一例を挙げると、ブリャンスク地方での半減期は1・0年から2・8年であったのに対し、カルーガ地方では2・3年から4・8年もかかった。カルーガ地方では、農産物中のセシウム137濃度を低減するために、粘土鉱物をセシウムと結合させる生化学的対策が用いられた。
農産物中のセシウム137濃度の減少には、大きく分けて生化学的対策、農業対策の実行、物理的な減退の3要因がある。対策の実施レベルが異なる複数の地域で、セシウム137の半減期を比較することにより、農産物中の汚染レベルの減少に、これら3要因がどれだけ影響したか推定された。1994年から1987年にかけて抜本的な対策が行なわれた地域では、農業対策が汚染低減に貢献した度合は60%であった。対照的に、限られた農業対策のみが施された地域では、生化学的プロセスが低減に大きく貢献した(表9)。
【集団線量に与える農業対策と除染作業の効果】
チェルノブイリ原発事故後、農業対策が徹底的に行なわれたことにより、地元住民への実行線量と集団線量の双方が大幅に低減した。
1991年から1999年までの対策により、放射能沈着濃度が平方メートル当たり18万5000から37万Bqの区域住民に対する年間積算線量は平均22%低減し、37万から55万5000Bq区域では平均32%、55万5000Bq以上の汚染区域では40%以上の低減を達成した。
農業対策の実施により回避された集団線量の評価は複雑であり、対策に関する詳細と汚染地域で生産された農産物と飼料の使用に関するデータを必要とする。また、対策は個人農場(主に地元住民が消費する農産物を生産)と集団農場で実施され、双方が放射能回避に貢献している。ベラルーシとロシアの2国で回避された線量の推定を表5と6に示した。
事故から20年間で、ベラルーシ、ロシアの農村集落の個人農場において、対策実施により回避できた積算集団線量は3000から5000人・シーベルト(訳注man-Sv:評価対象となる集団構成員の線量をすべて加算したもの。 1万人が1人あたり1mSv被曝したとき、10人・Svという)と推定されている。このうち約46%から65%がもっとも高い汚染地域ゴメリやブリャンスク地方の低減効果による。
集団農場で生産された農作物の主な消費者は、汚染地域と周辺地域内の都市住民である。2国で回避された集団線量の合計は6000から9000人・Svであるが、作物は被害地域の外にも持ち出されるため、この回避線量のうち一部分のみが、正式な「汚染」区域内の住民に関連するものである。
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