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特集

日本の土壌除染対策は史上最低“チェルノブイリ以下”だ! 被曝放置農地の現実を直視せよ



【チェルノブイリ以下の対応】

 これから肝心になってくるのは半減期が2年に及ぶセシウム134そして30年に及ぶセシウム137の地表積算値だ。文科省は5月6日になって初めて、地表のセシウムの汚染状況を公表した(図3)。この測定結果は原発から80キロ圏内に限られており、その範囲外のデータはまたしても残念ながら、公表されていない。

 要するに、日本政府は問題の範囲を特定すらできていない。もしくは、意図的に隠している。

 これでは25年前に人類を震撼させたチェルノブイリ原発事故以下の対応といっても過言ではない。

 当時のソ連政府がまず行ったのは、「汚染区域」と「非汚染区域」を公式に分ける作業であった。ソ連政府はチェルノブイリ原発事故後、土壌1平方メートル当たりのセシウム137の値が3万7000Bqを上回る土地が汚染区域と指定した。まさに問題解決の定石「範囲の限定」をやった。その農地及び放牧地面積は15万平方キロに及び、日本の国土面積の4割に相当する広大な地域に及んだ。

 事故が発生した1986年4月26日の約1カ月後、6月上旬には汚染レベル区域別の地図がある程度作成された(日本は3か月後のいまも未調査もしくは調査結果を隠匿)。8月から9月にかけて汚染区域内の集団農場(コルホーズ)に対し、旧ソ連政府は個別農場別の汚染マップを渡し、小規模な民間農家が集まる地域では、集落毎のマップを作成していった。その上で、積算値を中長期的に下げていくための様々な農業技術的な“放射線防護”策が実行に移されていった。例を挙げてみよう(詳細は28頁から35頁参照)。

 一番効果があった方法が二つある。一つは、窒素・リン酸・カリの肥料配合を変えることでセシウム137の作物吸収率を抑えること。もう一つは、新たなプラウを開発し、放射能で汚染した表土をはぎとりながら同時に地中奥深く埋設する耕法だ。ほかには、化学肥料を使用し、被曝した家畜の糞尿を使う堆肥の利用を避けたり、石灰を畑に散布し、農地のアルカリ性を高めるといった手法も推奨された。


【縦割り行政が汚染マップ作成を阻む】

 日本では土壌の調査すらまともにやっていない。50キロ圏内はごく一部で行ってはいても、管轄する省によって計り方が違う。同じ調査で文科省は表土5センチ以内を採取し、農水省は3倍の15センチまで採土している。この数値では文科省の3分の1に薄まってしまう。農地は農水省の管轄のため、文科省の値は空地を測定したものだ。(作物の汚染検査にしても、文科省の値が検体そのままの値に対し、農水省の検査は洗浄後の値である。さらには文科省は農地での検査が管轄外のため野草や雑草しか測定していない。同じ農地調査でも千葉県は15センチ、茨城県は3センチと県によってバラバラだ。海洋調査でも、海中は農水省、海底は文科省の管轄と縦割り行政の弊害が露呈している)。

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