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【特集】
営農技術で対応可能な除塩・除染手法
- 編集部
- 2011年07月15日
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単年度で徐塩ができる「心土破砕+スタブルカルチ耕」
この記事はスガノ農機(株)より得たデータを中心に、「イネイネ・日本」プロジェクト第10回シンポジウムの発表((独)農研機構の藤森新作氏)を参考に構成した。
この除塩技術はスガノ農機が宮城県東松島市で4月28日から6月8日に実施した方法である。圃場は東松島市野蒜地区の農業生産法人(有)アグリード鳴瀬が管理する用排水が共通する約34ha。用排水が分離されていないため、新規に湛水する場合でも排水した塩分が一部戻ってしまう条件だった。対策前の水田はEC値4.6~4.7mS/cmの塩分濃度。冠水に伴うヘドロの堆積は多い場所でも1~2cm程度で、この手法が有効なのは5cm未満と見積もっている。
7月10日現在の様子をアグリード鳴瀬の阿部代表に聞いたところ、ほぼすべての水田で目標値であるEC0.3mS/cmを下回る0.12というレベルまで下がった。5月25日から6月11日までに田植えを行ない、イネの生育は順調だという。
阿部氏は「国などが指導するロータリの代掻きによる除塩では3年位かかり、ブロックローテーションに支障が出る。今回の方法であれば単年度で解決でき、生育も順調。また、散乱している稲ワラに塩分が吸着しており、それを確実に取り去ったのも効果を高めたと思う」と話す。
ただし、元々暗渠が目詰まりしているような圃場では効果が低いようだ。ヘドロ深さが5cm未満という条件は全被害面積の一部に過ぎないかもしれないが、有効な方法ではないだろうか。以下、作業手順を示す。
〈作業前の注意〉
除塩作業を行なう場合には事前に以下のことを確認する。
堆積したヘドロに有害物質が含まれていないことを公的機関などで分析・検査を受ける。
用・排水施設と暗渠の有無を確認。
実施圃場は、用排水が同一であるがゴールデンウィーク前に稼働でき、暗渠は全圃場にて敷設されていた。
〈作業の手順〉
サブソイラで深さ50cm・間隔90cmの心土破砕作業を行なう。
実施圃場は全圃場に60cm~80cmの深さで暗渠が敷設されており、暗渠管を切らないよう作業深さ50cmで作業を行なった。特に粘性が強い圃場は圃場に対して斜めにクロスさせて網の目状にサブソイラを通す。
サブソイラでの心土破砕作業後、スタブルカルチで深さ20cmの荒耕起作業を行なう。
ロータリで過剰砕土するとサブソイラによって破砕形成された水道が湛水時に目詰まりを起こす可能性があるためスタブルカルチを使う。作業スピードが速く、土塊は荒めでプラウ耕ほどの大きな土塊にならない。
水口・落水口を止め、丸2日(48時間)湛水させた後、落水口を開けて落水させる。水が抜けきったらEC濃度を測定し、0.3mS/cm以下になるまで、湛水・落水を繰り返す。その後、代掻き、田植えを行なう。
また、一部圃場ではサブソイラ施工後、ヘドロごとプラウで反転し、スタブルカルチを掛け、その後をレベラで均平・整地後に代掻き・田植えをするという方法も試し、有意な効果を得ている。
作業効果の比較は行なっていないが、塩分濃度の高い表土とヘドロを深部に埋め込むことで表層の塩分濃度をあらかじめに下げることができる。併せて、暗渠からの排水によって、効果的な除塩が行えるのではないかと考えられる。
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