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土門「辛」聞

農業が元気づくコメ先物市場 全中の反対論は支離滅裂だ


 一、遅くとも平成20年度までに、農業者・農業者団体が自主的・主体的に需給調整を行う姿を実現

 一、農協等生産出荷団体等は、米穀の生産数量の目標の設定方針等を含む生産調整方針を作成

 生産調整で国が関与するのは、「米需要量に関する情報」を提供することと大綱では示されている。その情報をもとに「農協、集荷業者、農業者等の認定方針作成者が自ら生産数量目標を決定し、農業者に配分するしくみ」というように整理されている。ただ農協組織は、自らの力で生産目標数量を配分することができない。そこで生産数量の配分で今なお国や地方自治体の力に頼らざるを得ないのが実情である。

 全中が、「国の主導で」と強弁するのは、農水省が提供する「都道府県別の生産数量目標(需要量に関する情報)」という数字を根拠にしているようだが、それを勝手に解釈しているのではなかろうか。これは「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」にもとづいて策定されるが、あくまで需要量の予測情報を流しているだけである。その文書の中にも法的根拠にもとづく強制力のある「配分」という言葉はどこにも見当たらない。霞が関風に表現すれば、単なる天気予報というやつだ。

 それよりも生産調整は、いかにそれがコメという商品であっても、民間が取り組むべきものであって、国が生産数量の配分というような業務を執り行なうことは、競争政策上、別の問題を惹起する可能性もなきにしもあらず、と指摘しておきたい。

 先の文書で全中は、「米先物取引を不認可とした平成17年当時と同じ」と指摘しているが、これには「万物は流転する」というヘラクレイトスの言葉で答えておこう。

 全中は米政策改革大綱のことを無視しているようである。自民党と公明党の連立政権時代に策定されたもので、全中は、その自民党を組織挙げて強く支援していたのではなかろうか。この大綱は、法律ではないので遵守する義務はないという立場は、およそ農業者を代表する全国団体としては無責任極まる態度と批判されても仕方がないと思う。

 先に触れた「市場を通して需要を感じとる」という文言は、コメ先物市場というインフラを国が責任を持って整備すると国民に約束したものであり、これを実現するために大綱策定から10年近い準備期間を与えてきたのである。

 全中が掲げた反対理由は隔靴掻痒の感がある。全中が抱く最大の懸念は、先物市場の創設が、農協組織、なかんずく全農を壊滅的状況に追い込むぐらいのインパクトがあるのを恐れているからであろう。そんな懸念は無用と伝えておきたい。先物市場創設は、やがて農協にも多大なメリットを与えることを確信しているからだ。農協の独自販売が全農への委託販売を上回る時代になれば、必ずその時期はやってくる。

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