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また、欧州や英米であれ、中東の金持ち国であれ、比較してみると日本ほど民度が高く、豊かで、風光明媚で、安全で暮らしやすい国は他にない。では、ドバイの街やロンドンのメイフェア地区には世界の富が集まっていて、目にするものがすべて豪奢だけど、あれはどうなのよ。と言われそうだが、あの豊かさは個人が富を独占した結果であって、共有できる豊かさを示しているわけではない。
ロンドンを例えにするなら、表通りは豪奢を極めていても裏通りは労働者の住まう貧民屈が顕在する。それゆえ、産業革命ごろから行政によって危険回避情報として「貧困マップ」が作成されていた。現在でも地域の変動こそあれ、移民や難民の流入で貧困地域は消えていない。つまり、日本は豊かさが平均的に分散されているが、英国ではいまだに貧富の差が激しい。それゆえに窃盗犯罪も多いし、凶悪事件の原因も所得と教育の不足に拠るものが多いだけに、民度の平均点も日本より低い。
英国が大航海時代に世界の覇権を握ったと言われるのは18世紀の終わりである。フランスと競って、世界を食い物にする植民政策を取ってきたのは、水産業を軽んじ、国内の農林業をダメにしてしまったから、食い扶持を求めて海に出ただけのことだ。栄光ある大英帝国とか紳士淑女の国などとはちゃんちゃらオカシイのである。
そんな英国の食事がマズイと言われる最大の理由は、彼らの食に対する無頓着さである。よく言えば質実剛健、言い換えれば足るを知る人々なので、食は後回しにされたという説もある。しかし、旨いものは英国にもたくさんある。昨今、英国に在住する我々外国人がそれらを見つけ出して、英国人に食べさせると彼らも食の楽しみに気づいてしまったようだ。英食はマズイとバカにしてやるのが、日本人としての楽しみのひとつであったが、最近の英国食は妙に旨い。英国の象徴である「マズイ」が失われるようで、むしろ残念に思う。……とは、ちょっと意地悪だろうか。
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マック木下
ゼネコン、商社、航空旅行業、世界的弱電企業などの国際畑で育ち過ぎた50代。1980年代から主に英国に住み、英人が本名をちゃんと発音できなかったので、いつしかマックに。ジャンルには無節操なライターで、執筆歴は10年間ほど。専門は日英関係史とロンドンの歴史散歩。寄稿先は『英国特集』『R.S.V.P.』『Quality Britain』『Taste of Britain』『未来教室』『ぼんじゅーるレマン』のほかミニコミや会員誌など。
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