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特集

8月8日、いよいよ試験上場スタート!農業経営者のためのコメ先物入門


 一方、100haクラスの農地でコメを生産している大規模農家や生産法人があるとしよう。そこで、たとえば、生産量の何割かを相対で個人の消費者グループや流通業者などに、残りを農協系集荷業者に出荷し、厳しい価格交渉を強いられている農業経営者の場合はどうか。

 さすがに、先物の担当者を育てたり雇ったりする余裕はないかもしれない。であれば、自分が生産したり、手持ちしたりしている現物の一部を使った先物市場での小手試しを勧めたい。その後は無理のない範囲で徐々に量を増やし、現物の4分の1から3分の1を先物市場でヘッジすることを目標にすればよいと思う。先物取引先進国の米国のリスク・マネジメントに通暁した大規模農場経営者でも、実際に先物市場でヘッジするのは生産した現物の40%程度というケースが実情だからである。


【ジャポニカ米の指標価格を世界に発信する】

 日本はいまだに「失われた20年」から抜け出すことができずにいる。その理由は21世紀を先導する情報革命への適応不全にある。では、どうすれば適応できるのか。国内の市場を閉鎖系から開放系に変えることだ。

 情報・資金・人材が集まる先物市場は、国内経済の発展に必要不可欠な産業インフラである。基幹物資の価格決定権を自国の取引所が持つことが国益につながるのである。反面、市場が衰微して他国に価格決定権を奪われれば、一国の産業全体に悪影響を及ぼしかねない。金や原油などの価格決定権を持つ取引所のある米国や中国が、国家をあげて商品先物市場の発展に尽力しているのはそのためだ。

 日本のコメ先物市場は「ジャポニカ米(短粒種・玄米)」が取引される、世界に類を見ないユニークな市場である。タイはインディカ米(長粒種・精米)、米国はインディカ米(長粒種・籾米)を取引している。この先物市場が、本上場を経てさらに発展しすれば、日本のコメが世界中の短粒種の指標価格になる可能性は高いのだ。日本が自国のコメの公正な価格を決め流通させるのに、ほかの国の価格を参考指標に使うという「ねじれ現象」を起こしてはならない。

 価格が長期低落傾向にあるコメは先物取引には向かないという批判もある。私は「だからこそ先物市場は必要」と言い続けてきた。コメ先物市場が重要な産業インフラの一つとして健全に発展し、その存在意義を国際的に認められる。その市場へ情報・資金・人材が流れ込んでくれば取引は活発化し、価格の長期低落は、上昇傾向に転じるはずだ。コメが高く売れることで、農家の所得も引き上げられると私はみている。

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