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特集

水稲育苗の技術と経営
遅れた機械化をどう克服するか

(有)笛木農園 代表取締役笛木守さんの場合


 今年3月、笛木守さんは投資総額1億5000万円をかけて耐雪設計の大型ガラスハウスを始めとする各種機器設備を導入した。水稲育苗を中心に、野菜苗、チューリップ、豆苗などの生産を目的としたものである。建物を除く水稲育苗関連の施設機器への投資だけでも5000万円以上になる。

 この施設の初仕事となる水稲苗の受注量は約3万5000箱。将来的には7万~10万箱の水稲苗生産をする「苗販売業者」としての発展を笛木さんは考えている。


【笛木さんの苗販売の歴史】

 本誌第8号の経営者ルポでも紹介した笛木さんが経営する(有)笛木農園には、社員10名、パートも常時十数名いる。年間400万~500万パックのカイワレダイコン、4万箱以上の水稲苗の販売が同社の経営の中心である。約13haの稲作、チューリップ、ネギなど各種の切り花や野菜の他、アイガモを使った無農薬米なども栽培しており、ここ数年は路地農業部門をあらためて拡大してきている。

 笛木さんの水稲育苗ビジネスの歴史は古く、その本格事業化は昭和50年に1500万円の農業近代化資金を借りて始めた笛木育苗センターを作って以来である。当時の施設は、60ha規模、約1万箱の苗販売を想定したもので、初年度からその販売量を達成し、その後も年々受注量を増やしていった。田植機導入の早かった笛木さんは、センター設立以前の昭和45年頃から育苗を請け負ってはいた。

 カイワレダイコンのハウスを始めたのも水稲育苗の技術が活かせると考えたからであり、そもそも笛木さんの農業経営者としての成長の原点は水稲育苗であったのだ。しかしここ数年、笛木さんは苗販売を縮小する方向に気持ちが傾いていた。

 かつては、春の短期間の臨時雇用であっても十数名の労働力を集めることは簡単だった。だが、年々労働力の調達が困難になった。ましてや重労働である。生産規模が大きくなればなるほど労働力問題は深刻になり、人力労働に頼る限りこれ以上の苗生産の拡大は難しいと思われたからだ。


10万枚販売めざす 苗生産の技術革新


 ところが、播種からハウスへの展開までの作業を機械化でき、3~4人の労働力で今までの人力の重作業からも開放されるシステム化技術が開発されたことを知った。今まで15~16人の人手を要していた作業を3~4人で処理が可能になる。しかも、これまでの5分の1に労働力を減らしたとしても現在の倍以上の7万~10万箱の生産が可能になるのだ。

 今回の設㈲投資はそれを踏まえてのことなのである。しかし先にも紹介した通り総投資額1億5000万円と小さな金額ではない。年間の償却だけでも1500万円が必要だ。水稲苗関連に限っても、ボイラー、播種プラント、パレタイズロボット、アグロボ(全自動苗箱整列機)、フォークリフト、台車などで5000万円を超える。しかも、水稲苗の販売期間は4月末から5月の20日位までであり、施設の稼働期間としては2ヶ月弱と短い。そのために笛木さんは水稲苗以外に、野菜育苗、チューリップ、豆苗の生産などを行い、ハウスの稼働率を高める計画である。また、その出荷先についても目途がたっているようだ。

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