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特集

水稲育苗の技術と経営
遅れた機械化をどう克服するか

湘南農産(滋賀県)、横田章一氏(茨城県)、笛木農園(新潟県)という、それぞれに規模、労働力、目指す発展方向の異なる3つの農業生産者における、水稲育苗技術と、水稲苗販売への考え方を3件の〈ケーススタディ〉として紹介する。


ケース1 湖南農産 瀬川昌彦乙の場合



【指導・集荷から派生して 苗販売のニーズに応える】

 アルミ微箔片をポリエチレンで挟んだシルバーフィルムとべたがけの被覆材を組み合わせたシート、ジルバーラブを用いて、育苗器を使わない作業体系の実践に成功しているのが湖南農産(株)である。播種後、出芽を待つことなく、いきなりハウスに並べてしまうというのだ。

 同社は水田26町歩を営農し、また自社で収穫したものの他、契約先の農家からも米を買い上げ、それらをまとめて同社のブランドで販売している。昨年の扱い高は4500俵。この量は今秋から一気に増える予定で、ゆくゆくは2万俵くらいの扱いを目標としている。

 これらのうち2000俵は一般家庭を中心とした1500軒を顧客とする直販で、残りは愛知、京都など全国各地の仲間と組んで米穀店へ納入している。

 「米穀の流通を変えていきたい。これからは生産者が自分で値段をつけて売るやり方が主流になっていくはず。小売もそれを望んでいるし、そのほうが仕事として魅力がある。そして単に姿形だけでなく食味まで含めた品質を追求して、それを気に入ってくれた買い手と長くつき合っていくことが目標です」(瀬川さん)

 しかし米の流通が変わると、売り先がわからないという農家が増えてくるとも瀬川さんは考える。また一方、米穀店と直接つき合うとなれば、ある程度のロットをまとめる必要もある。個人で米穀店とつき合うのは難しいのだ。自社で生産もする一方、集荷・営農指導も行なう湖南農産のビジネスは、その2つの問題をクリアすべく発想されたものである。同社の水稲育苗・販売もその業務の一環として始められた。

 今年作った苗は8300箱。自社で使うのはこのうち3000箱で、残りの5300箱を、草津市一円、栗東、大津、山科等の117軒の農家に販売する。1箱800円の値付けだから、424万円の売上げとなる。

 「3ヵ月費やしてその全額だから、ほとんどサービス的なもの」(瀬川さん)

 とのことだが、育苗はハウスが必要、手間がかかる、失敗することも多い、若い人はやり方がわからないなどで顧客は毎年増加中である。また所在地の矢橋地区一帯は、1軒あたりの平均水田面積は2反ときわめて小規模な兼業農家の集まる地域。その狭い水田面積に対して1軒I軒が高い育苗器等の機械を買わなくてよくなったと言われるなど、果たしている役割には大きなものがある。

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