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【特集】
3・11 から半年、“実害”と“風評被害”が交錯する中で……東日本大震災で顧客コミュニケーションはどう変わったか?
- 編集部
- 2011年09月22日
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緊急アンケート 今、顧客は農産物に何を求めているのか?
今、顧客すなわち消費者は農産物をどう見ているのか。本誌ではネット上でアンケートを実施(2011年9月14~15日調査、有効回答数316、日本全国の男性女性20~50代対象、調査協力(株)クロス・マーケティング)。データを読み解き、彼ら彼女たちが望むコミュニケーションを探る。
事例紹介 震災後、農業経営者はどう動きどう説明してきたのか?
放射線物質の拡散と余震が続く中で、手探りの状態ではあったが、食品製造者としての説明責任を果たしてきた東日本の農業経営者がいる。経営を取り巻く環境や市場の評価は依然として厳しいが、伝えることをあきらめていない彼らの姿を追った。
■Case.1 「説明責任が評価され売上は前年比85%に」●(株)農業法人みずほ/みずほの村市場(茨城県つくば市)http://mizuhonomuraichiba.com/
【顧客を呼び放射能の講演と測定会を実施】
年商7億円――直売所運営の成功例として知られる「みずほの村市場」。原発事故の影響はこの直売所をも例外なく襲った。茨城県産ホウレンソウの出荷自粛が発表された3月19日を境に売上は急下降、前年比38%まで落ち込んだ。
その売上は半年たった9月現在、同85%まで回復したという。その秘訣は何だったのか。長谷川久夫代表を直撃した。
――売上回復の要因は?
「ぜんぶ放射能のせいにすれば、売上は表面上、回復しているよう見える。実際は違う。単に品物の品質が悪いから、売れてねぇだけよ。100%超えないと本物じゃない」
――独自の放射能検査が顧客の信用回復に功を奏したのではないのですか。
「最初は放射能検査に反対する出荷農家が大半だった。『もし規制値を超えたらヤブヘビになる』だってよ。これだから農業者はいつまでたっても自立できないんだ」
――とはいえ、今でも検査をしていない直売所は多い。
「農家が製造者責任を果たすのは当たり前。褒められた話ではない。問題はどんな対策したかではない。原発事故だろうが何だろうが、問題にすべきは一時的でも『みずほの村市場』に対して、お客さんが信頼を失っていた事実のほうだ。まだまだ本物の信頼が築けることを日頃からやりきれてない証拠だ」
農業経営と直売所経営の現実を厳しくとらえているのがうかがえた。
さて、以下はホウレンソウ出荷自粛日からのみずほの村市場の動きだ。
3月19日 ホウレンソウの出荷自粛
3月24日 分析会社にサンプル測定依頼
3月26日 茨城大学応用粒子線科学専攻・高 妻孝光教授に協力を依頼
3月27日 全契約農家に方針発表
3月29日 生産者・消費者合同の公開放射線 測定会を実施
堂目すべき迅速さだ。5日後の検査開始はまだしも、10日後には、生産者・消費者合同の放射線測定会を開催しているのだ。
さすがの長谷川代表も事故発生時は、「放射能の実態なんて皆目わからなかった」と明かす。
しかし、「肝心なのは知識の量ではない。どうやったら、市場の品物すべてに対して確実な検査体制を整えられるか」という仕組みづくりだ。この難問を解決するきっかけは地域の会合での出会いだった。応用粒子線科学が専門の高妻孝光・茨城大学教授が、簡易検査キットを会合へ持参していた。
「教授の専門的見地と検査機器を組み合わせば道筋ができる」
長谷川代表はすぐさま協力を依頼。「自分の研究が貢献できれば」と快諾した高妻教授と共同で検査の仕組みを作り上げていった。
「まず、田んぼと畑の土壌サンプルを計測。次に作物の簡易検査で汚染状況を把握し、初回出荷時は一定量を精密検査に出す。不検出、または規制値以下のものだけ出荷を許可する。その他、移行係数から出やすいものを特に重点的に検査する。並行して、土壌の除染技術を習得する」
次々と管理ポイントとフローを決め、瞬く間に行政に頼らない検査フローを編み出した。
協力依頼をした翌日の3月27日、契約農家(農業経営者会員)全員を集めた会合で長谷川代表は独自分析を行なう方針を発表した。
みずほの村市場の取り組みはこれで終わらない。
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