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特集

菅野祥孝(スガノ農機(株)相談役)氏を悼む 座談会 積年良土思想とは何だったのか(後編)

前回に引き続き、菅野祥孝氏(スガノ農機(株)相談役)を悼んだ座談会の後編をお伝えする。

前回に引き続き、菅野祥孝氏(スガノ農機(株)相談役)を悼んだ座談会の後編をお伝えする。

昆吉則 ここにおいでの4名の農業者は菅野祥孝さんがおっしゃっていたことを体現しています。それはプラウを使うとかそういうことではなく、苦労して大きなチャレンジをしてきたということです。
 玉手さんは決して面積は大きくないですが、ジャガイモを生産し、休閑緑肥も栽培しています。しかも、キタアカリを「VIP」という名前で販売しています。そういう思想や取り組みを祥孝さんは非常に尊敬していました。ジャガイモのことや経営のことを含め、今どんなことをやっているのか聞かせてもらえますか。また、祥孝さんと重なる部分がありましたらそちらもお願いします。


玉手博章 相談役(菅野祥孝氏)が亡くなった今、思うことはことあるごとに送られてきた手紙がもう送られてこないんだなということです。いただいた最初の2、3年は満足に読めませんでした。あの方の性格が非常によく出たくせのある字だったんですね。それが読めるようになってからようやくまともに話せるようになりました。
 先日、私の農場近くのホテルから宿泊客のご家族がジャガイモ掘り体験にお越しになりました。そのうちの1人のお嬢さんがものすごい好奇心の持ち主で、この子はすばらしいなと思って、親御さんに将来、良い人材になりますよと言いました。相談役もその子のようにあの歳になるまでずっと好奇心が続いた方だったと思います。


昆 玉手さんは今、どのくらいの規模なんですか?

玉手 13haくらいです。昔から変わりありません。ジャガイモはそのうち5ha強で、休閑緑肥は毎年2ha強ほどです。すべての作物を自分で販売していますので、お客様へのサービスと思って採算度外視で作っているものもいくつかあります。

村井信仁 祥孝さんが筆まめだという話が出ましたが、字を書くということは思想をまとめることです。記録すれば何度でも反すうできるんですね。あのまじめさで書いたということがあの人の精神を不動のものにしたんだと思います。
 それと、玉手さんは祥孝さんと相通じるところがありました。祥孝さんの父である豊治さんは町の名士です。その薫陶を受けた祥孝さんは父に追いつけ追い越せとばかりに生きてきました。片や玉手さんのお父さんは紅丸(ジャガイモの品種)発祥の地でその生産を推進した人物なんですね。それがやがて全道に広まります。キタアカリは息子の玉手さんが一役を担いました。親子で仲が良いんです。どちらも父親の影響を受け、しっかりした思想を持っていたからこそ打ち解けあえたんだと思います。


掛け値なし販売

昆 スガノさんは掛け値なし販売で商売されますよね。ここにおいでの方は納得していると思います。というのは、玉手さんはキタアカリを全部直売し、ゼロからお客さんを作って、今では3000人に届けています。その当時、出回っていなかったパソコンのソフトも自作しました。あれはだいぶお金がかかりましたよね?

玉手 秋田の八郎潟のコメの生産組合が1000万円弱を投資し、そのころの大企業が使うようなオフィスコンピューターを導入して処理していたはずなんです。個人が持てるパソコンではもちろんなかったですね。何とかこれを機械化しなければこういう商売に未来はないということで、車を買った気持ちで諦めて150万円くらいを投じてソフトを作りました。それから5年で次々に同じようなものが出てきて、今は宅配業者が提供しているものを使っています。

昆 玉手さんのお客さんによって値段を変えないというのは祥孝さんの思想と同じだと思うんですけど。

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