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同伴者たち

「自分にしかできないものが一番いいものなんです」

2月8日、外食産業の代表ということで農政審議会小委員会に出席させてもらいまして、陳述もさせてもらいました。審議会の方と、また私以外に呼ばれた方たちのお話の中から受けた印象は、まず確実に系統組織の見直しの方向にあるなということ。またいつもこの話は最後の方になるんですが、一応規制緩和の方向で考えていくといったものでした。
大規模化で単純競争に巻き込まれるな


 2月8日、外食産業の代表ということで農政審議会小委員会に出席させてもらいまして、陳述もさせてもらいました。審議会の方と、また私以外に呼ばれた方たちのお話の中から受けた印象は、まず確実に系統組織の見直しの方向にあるなということ。またいつもこの話は最後の方になるんですが、一応規制緩和の方向で考えていくといったものでした。

 しかし結局、大筋は『今のままの農業を続けていけて、それで売れるようなしくみがあればいいな』という発想であった気がします。『ウルグアイ・ラウンドの打撃はとくに中山間地域に及ぶんじゃないか、じゃあそれに対して何かしなくちゃ』っていうような考えらしく聞こえる。その発想でいっか場合の『受け皿』となるのが、私たち食堂業とスーパーマーケッ卜だということなんでしょう。

 けれどスーパーマーケッ卜にしてもレストランにしても、チェーン展開している企業では、大量の商品についての品質と価格を追求する中で、今はかなり開発輸入(注参照)の技術が進んでいます。そして開発輸入した食材と国内生産の農産物の間には、すでに『競争』が起こっていて、とくに国産のものでも消費地まで長距離輸送するようなものの場合、開発輸入したものとの競争となると、なかなか勝てないというのが現実だと思います。そういった意味で、『空洞化』は着実に進んでいると言える。

 そこで『大規模化』の推進で生産コストを削減して海外のものに対抗していこうという考えも起こってくるわけでしょうが、そういう思考の流れというのは、農産物を『食べ物』としてではなくて、ただ食べられればいいというもの、『エサ』としてしか意識していないことなんだと思うわけです。

 私たちがレストラン・チェーンを経営していて、しばしば話題にすることに、『マイナスの利益』と『プラスの利益』というのがあります。マイナスの利益というのは、最近いろんな会社でよく言う『コスト削減』とか『リストラ』なんていう号令がそれで、口で言うのは簡単だけれども実行するにはものすごい技術が必要で、それでやっとほんのちょっと利益が増すような、そういう利益の出し方です。それに対してプラスの利益というのは、新しいニーズをつかまえて、新しい商品を作り、新しいアプローチで買い手に訴えていくやり方です。

 今の日本の農政は、この前者、マイナスの利益でしか考えられていないと思います。私は農政に、そういう単なるコスト削減的政策ではなくて、これからの農業の新しい躍動に結びつくような、積極的な方策を打ち出してほしいのです。

 農業の問題に限らず、商売をやっていて一番よくないのは、どこにでもあるものに、どこにでもある値段を付けて、どこにでもある売り方で売るというやり方です。これをやっていると単純競争になって、結局競争が激化することになります。ファミリー・レストランでも、よそと同じようなハンバーグを売っていたら他の店とたいへんなお客の取り合いが起きて、非常に不毛な戦いになります。だから差別化といって、よそとは違う商品を作って、よそとは違うお客さんをしっかり引きつけようと一生懸命になるわけです。他の店とうまく棲み分けるように考える。そしていろいろな店ができて、業界の多様度が増す。すると市場が活性化して、ホットになる。

 日本も昔は、みんなが『ヒトなみになりたい』と考える時代がありましたが、最近は『ヒトより違っていたい』時代になって、さらに『ヒトは関係ない』時代になってきた。だからニーズ自体が多様になっている。数年前から、いろいろなメーカーやレストランで「多品種少量生産」が合い言葉になっています。農業でもこうした市場の動向に添った考え方をするべきではないですか。生産者の一人ひとりが自分に合ったものを見つけて、自分なりのやり方で生産して成功する方法はあるはずです。レストランでも農業でも、自分にしかできないものを作るのが、一番いいのです。そういった中小規模の農業者にも有効な農業戦略が必要なんです。

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