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イベントレポート

誌上採録 『月刊農業経営者』シンポジウム 農業は日本のお荷物などではない 私たちはTPPを恐れない!(前編)



農水省の試算に隠された巧妙なワナ

昆 TPPに参画すると、日本のコメの生産が1割になってしまうという農林水産省の試算ですが、これは机上の空論です。浅川の方から解説いたします。

浅川芳裕(本誌副編集長) 農水省が発表した『国境措置撤廃による農産物生産等への影響試算について』という試算です(54頁図1参照)。しかし、この試算自体がTPPに限らず、ありとあらゆる国境措置をすべてゼロにする前提に立っています。その点で、まず「日本がTPP参加した場合の試算」といいながら、そうではないという事実があります。
農産物の生産額が4兆1000億減る農産物のうち48%がコメであり、1兆9700億円であるという試算になっております。しかし、今の日本のコメの生産額が1兆8000億円程度なので、そもそも現状の生産額よりも、多い試算をしているわけでよく分からないものなんです。

 また9割程度のコメがなくなるとしていますが、現状の日本のコメの流通は、約880万tが精米ベースで流通しています。そのうちに2割に相当する160万tくらいが農家の自家消費、つまり縁故米。9割なくなるのであれば、縁故米を作っていらっしゃる農家が、米国産のコメ、あるいは中国産のコメをわざわざ輸入して、それを東京の娘に配らないといけなくなるわけで、9割減るというのがそもそもあり得ない。それに阿部さんと橋本さんは直接お客様や業者に売っているとのことでしたが、残りの8割、つまり720万tのうちの2割が、現在農業経営者から消費者に直接販売しているコメの量です。そうした消費行動をとっている顧客が、よそから買うという行動もまた、普通に考えてもありえないでしょう。

 価格が4分の1になるので、品質も海外産のコメが日本産と同等になるので、ほとんどの方が外米になるという見方もあります。現状は玄米ベースで6億数千万t、精米ベースで5億t弱の生産量があります。しかし、日本人が食べているジャポニカ米というのは、世界の生産量の1割くらいしかありません。せいぜい5000万~6000万tで、そのうちの2割(1000万~1200万t)弱くらいが日本で作られています。そして、韓国や台湾で500~600万tです。米国におけるコメの生産量は、全体で1000万tくらいですが、そのうちの7割がインディカ種の長粒米。3割が中粒種なので、だいたい300万tしかありません。2009年のデータでは短粒種のジャポニカ米は17万4000t。TPP9カ国が作っているコメを全部日本に持ってきたとしても、それだけの量は世の中に存在しないんです。すでに米国は中粒種のコメを世界50~70カ国に輸出していますから、そのコメを引っぺがえさないと入ってこない。

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