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カルチベーターの役割
ここでカルチベータの歴史を振り返ってみよう。昔は化学肥料や農薬をあまり使うことができなかったので、機械にさまざまな工夫をし、生産性を高めようとしている。現在のようにトラクタの力で押しまくることもできないので、原理原則に忠実であり、教えられるところが多い。
写真(3)は播種の初期の畜力カルチベータである。前部のナイフは摩耕しているが、深く切れ目を入れ、中耕と同時に次に続く除草刃が円滑に作業でくるようにしている。中耕・除草の原形である。
中耕が何故大切かといえば、硬化した土壌が軟らかくなり、作物の根が伸びやすくなるだけのことではない。軟らかくすることによって透水性が良好になり、湿害を回避できるからである。我が国のように、降水量の多い国では、特に重要な作業になっている。
畜力時代は人馬によって人為的に畦間が踏み固められる。トラクタの時代はタイヤによって走行部はかなり緊密な状態に踏み固められる。降水があれば、水は硬いところから軟らかいところに移動するのである。畦間が過度に踏み固められていれば、水は軟らかい株際に移動して湿害をもたらす結果となる。
畦間を深く中耕する技術は、湿害を回避する技術と知られ、篤農家は中耕には手を抜かない。中耕機にさまざまな工夫を凝らすのである。余分な水分を畦間に移動させ、さらに下方に逃がすことは、株間を適正水分に保つばかりでなく、地温も上昇させるのである。作物は健全に育つべくして育つ理屈になる。
最近、管理機と称せられるものが普及し、便利なものと評判である。小型ロータリティラーにいろいろなアタッチメントを付したもので、多様な作業のできることが評価できる。しかし、見かけはきれいな作業であるが、肝心の中耕が忘れられているのは不満である。
けん引力に不足するとこれから中耕は無理とあきらめていると思えるが、排水不良、過湿対策として高畦栽培に逃れるとすれば邪道ではないだろうか。きちんと中耕さえしていれば、平畦栽培でよく、高畦栽培より管理作業は容易であり、生産性を高めることができるのである。
浅耕と中耕無視の弊害
府県の畑地で驚かされるのは、浅い位置に硬盤が形成され、それがすごく硬いことである。何のことはない。長年のロータリの浅耕による弊害である。その上管理作業においてまともな中耕が施されていなければ、排水不良になるのは当たり前である。ロータリティラーの発達で、高畦栽培に逃れているが、それが近代技術と思うのは錯覚であり、ナンセンスである。
府県の場合は、気象条件に恵まれているのに意外と畑作物の収量が低い。これは本来の耕すことを忘れたロータリティラー依存症である。ボトムプラウによる深耕が行われることもあまりなく、まともな中耕も行われなければ、土地の潜在能力を生かすこともなく、むしろ土地を傷める方に走っていることになる。反省期に来ていると思える。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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