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農学とは草との闘いである
省力化、低コスト化のための不耕起栽培も大いに結構である。しかし、降水量が多く、雑草の繁茂しやすい環境にある我が国が高位生産を維持するためには、まさに雑草との闘いなのである。一度雑草を生やしてしまうと、それが種草になって、さらに雑草に苦しめられる結果になってしまうことを知らねばならない。
不耕起栽培が成立するかしないかは雑草の処理法にかかる。残念ながら現状では、ほとんどの試験成績が雑草処理が課題として残ると結論けけている。それでは実際の場面には成立するとは言えないのである。
今、生きるために何をしなければならないか。不耕起栽培などの空論に惑わされてはならない。基本技には忠実に、中耕・除草・培上に小耕起技術を駆使することである。一見、手を掛けているようでありながら結果として省力的であり、しかも増収する。増収は低コスト化の近道でもあるのである。
写真1 スプリングウィーダ付きカルチベータ
スプリングウィーダはいわゆる“メクラ除草”である。播種直後にもかけて表土を撹土し、雑草が生えないようにしている。写真は作物が大きくなってからの作業で、スプリングウィーダ除草の最終段階に入っている。この後はカルチベーダの爪による撹土、培土などによって除草が行なわれ、畦間の中耕も入る
写真2 精密カルチベータ
株間除草輪も装備しており、株間や畦間を十分に撹土し、雑草の萌芽を徹底的に押さえるように配慮している。「雑草に厳しく作物に優しい」が除早の基本であり、初期の段階で雑草に容赦はしない
写真3 初期の畜力カルチベータ
中央にナイフが付いており、畦間を深く砕土している。後部の横並びの爪は撹土用で、十分に砕土し、表層を乾燥させ、雑草の萌芽を抑制するものである
写真4 三畦畜力カルチベータ
馬匹改良が進み、馬格が大きくなり、また調教も行き届くと、三畦カルチベータが使えるようになる。中耕・除草・培土にさまざまな工夫がみられ、管理作業に威力を発揮する
写真5 三畦カルチベータの作業
畜力の場合は、トラクタのように作業速度を自在に変えることはできない。したがって、爪の数を多くするとか、爪の形状を変えることで条件に合わせるようにしている
写真6 畜力用培土プラウ
小培土は三畦カルチベータにも行なうことができるが、バレイショのように大培土を造成しなければならない場合は、専用の培土プラウを用いた。土質、地域によって形状が異なる
写真7 初期のトラクタ用リッジャ
深植えのための溝切りと倍土兼用の機械である。土壌を素直に寄せるところから使いやすい構造であっても、バレイショの倍土には倍土の量、形状面に不満が残った
写真8 整畦倍土機
トラクタ用カルチベータにアタッチメントとして取り付けたものである。曲面はボトムプラウと似ており、土壌を反転しながら株際に寄せる。後部のプラスチック板で整畦するが、大きく理想的な形状の倍土に仕上がる
写真9 整畦倍土作業
土壌を反転することによって雑草の繁茂を抑制することができ、除草の省力化を約束する。大きな倍土は養分吸収領域の拡大であり、増収に結びつく
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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