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自分の畑は自分で診断する

これなら分かる「土と肥料」の実践講座-土壌溶液たった今の栄養状態を知るにはその2

春は人事異動の季節ということで、今年も新聞などに載る官公庁の人事の記事が目立つようになってきた。これを見ていつも思うのは、いかに日本の役所に農業関係の部署が多いかといったことである。
 春は人事異動の季節ということで、今年も新聞などに載る官公庁の人事の記事が目立つようになってきた。これを見ていつも思うのは、いかに日本の役所に農業関係の部署が多いかといったことである。では私のように民間から農業技術の普及をめざしている者も、いつかこんな数になってくれるだろうか。残念ながらそうは絶対にならないであろう。最近になってようやく“知的所有権”への関心も高まってきたが、第一次産業の分野ではノウハウの独占といったことは難しいだろう。――農業コンサルタント危うしである。

 そんなことを考える一方、アメリカの肥料メーカーのパイポネックス社の新しいビジネスが注目される。同社は現在、日本のゴルフ場を対象とした土壌分析と診断、それに関連させた肥料設計、さらには、現場での技術指導まで含めての肥料販売システムを展開している。もちろん、このようなサービスが含まれているため、肥料そのものはたいへん高価なものに設定してある。

 そしてその方式を、長年経験を積んだ日本のグリーンキーパーが導入してきている。彼らいわく、自分たちより、アメリカのコンサルティング技術の方が上だというのである。そしてさらに注目されるのは、この会社はゴルフ場管理に必要な技術を持つ各分野の企業とグループ化して営業戦略を立てているのである。

 こうした動きを、単にゴルフ場だけのことと考えるべきだろうか。私は、こうした営業スタイルが、間もなく日本の農業にも同様に迫ってくるものと予想している。日本の農業技術者、いやなによりも農業経営者たるもの、こうした動きには大いに気を配っていたいものである。


土壌溶液そのものを採取する器具が登場


 さて、そんなことを念頭に置きつつ、前回に続いての土壌溶液の話に入っていこう。

 一般に土壌分析は土をサンプルとして取り、それを乾かして各種の薬品により抽出するなど前処理をして、その液を機器分析にかける。したがって手間も時間もかかり、とてもタイムリーな情報とはいえないものだ。経験のある人なら知っていることである。

 しかし問題なのはこの時間差のことだけではない。土壌分析とは、“土の固相の化学的性質・状態”がどのようなものかを知る手段であって、必ずしも“固相の性質・状態=液相の性質・状態”ではないということだ。固相の性質ももちろん作物の育つ環境として重要なことではあるが、それとは別にもう一つ、作物が実際に摂取している栄養面での状態を把握するということも必要なのである。

 このことを水耕栽培で考えてみると、生育環境(土耕での土壌)は水とそれに溶け込んでいる酸素ということになり、栄養面は溶かし込んでいく液肥に由来する各種無機イオンということになる。水耕の場合は、栄養状態の確認は、ただその水の成分を測ればよいわけだから、実にタイムリーに行なえる。それはロックウール耕でも同様だ。

 では土耕ではどうかというと、理屈では上粒子の隙間(孔隙)に存在する水を採って調べればよいわけだが、実際にはそれをするための道具がなく、現場では行なえなかった。実験室レベルでは、生土を採ってきて、それを遠心分離機にかけて、その溶液を分離するという採取法があるが、これは一部の研究者にしか行なえない。

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