ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

トラクタ試乗対決 

「ファーマーズ・ウィークリー」(Farmers Weekly)は、コモンレールディーゼルエンジン(高燃焼効率システム)搭載のライバル機種を5段階評価で比較検討した。(アンドリュー・パース記者) ※「農業経営者」編集部注:本誌特約、ファーマーズ・ウィークリーの名物コーナー、トラクタ試乗比較記事である。記事に出てくる仕様はイギリス国内市場で販売されるものに基づいている。
【価格】
ニューホランドTS135A・・・47,968ポンド(9,593,600円)

ジョンディア6620・・・52,321ポンド(10,464,200円)
※1ポンド=200円で計算


【仕様】
ニューホランドTS135A・・・エンジン定格出力(hp)118.8/146.7*、エンジン最高出力(hp)130.8/154.6*、変速段数 前進17段/後進16段、最低/最高/平均騒音数(dB) 73/73/73、燃料タンク容量(L) 254、揚力(kg)(低/中間/高地点) 5211/5863/5914、最高油圧出力(kW) 25、軸距(mm) 2661、キャビン高さ(mm) 2965、試乗時の総質量(kg) 5791+810

ジュンディア6620・・・エンジン定格出力(hp) 104.5、エンジン最高出力(hp) 122.5、変速段数 前進24段/後進24段
最低/最高/平均騒音数(dB) 73/75/74、燃料タンク容量(L) 207、揚力(kg) (低/中間/高地点) 4007/6129/6516
最高油圧出力(kW) 29.8、軸距(mm) 2650、キャビン高さ(mm) 2875、試乗時の総質量(kg) 5977+900
*PTO回転時 ※1hp=約1.01ps、1kW=1.36ps


【第1印象】
ニューホランドTS135A・・・ニューホランドTS135Aの大きな泥よけは、バックライトを汚れや傷から保護できそうだ。ヘッドライトの取り付け位置も良い。しかし、全体的に仕上げの粗さが目立つ。

ジュンディア6620・・・ジョンディア6620のスタイルは、ニューホランドTS135Aと比べるとすっきりして見える。しかし後方の泥よけは、ライトやミラーを汚れから完全には保護できそうにない。


【コモンレールディーゼルエンジンを搭載】
ジョンディア6620とニューホランドTS135Aはどちらも最新鋭機種である。24バルブ、6気筒コモンレールディーゼルエンジンを搭載して、排ガス抑制、燃焼効率、性能のバランスは一段と優れたものになった。コモンレールディーゼルエンジンを、ジョンディアは定評ある6020シリーズに初めて組み込み、ニューホランドは今回初登場のTS-Aシリーズに搭載した。

※コモンレールとは
コモンレールとは、燃料を圧縮して貯めておき、コンピュータで燃料噴射のタイミングをコントロールするシステムである。かつては燃料噴射ポンプのみに頼っていた作業を2つに分けたことで、燃料効率に優れる。フィアットが1980年代に開発したシステムで、現在はボッシュが最大のシェアを持っている。ジョンディアは日本のデンソーから供給を受けている。
●主要部品
・制御弁付き高圧ポンプ・コモンレール(高圧燃料を貯めておく筒)
・電子制御機能付きインジェクター
・ECU(燃料噴射のタイミングと燃料の動きを制御するコンピュータ)。エンジンの回転数やセンサと連動して、燃料の噴射量や噴射のタイミングを決定する。
●コモンレールの長所
・状況に合わせてエンジンの微調整ができる。
・負荷の変化に合わせて迅速な対応ができる。
・高圧燃料と正確な噴射タイミングにより、効率的な噴霧ができ、経済性に優れる。
・低騒音。燃料噴射の電子制御によって燃焼効率が上がり、その分ノイズが減少。
・均一な燃焼により、排ガスの量が減少。


【エンジン】旧機種からの改善が見られるニューホランド・ジュンデジアもパワーに不満なし
■ニューホランドTS135A・・・4.5点
6.73リットルの4バルブ6気筒ターボエンジンを搭載している。あらゆる段階で安定した出力を維持し、負荷のピーク時にもなんなく対応できる圧倒性、回転力の上昇する比率を高いままに保持する能力を兼ね備えている。パワーマネージメントシステムは、現在PTO回転数が1300rpmを超えた場合にのみ作動する。シルソー研究所が行ったテストによれば、最高出力を18.2%、最高回転力を7.5%上昇させる。ただし、燃料消費量は時間あたり4.4リットル上昇する。

■ジョンディア6620・・・4.5点
ジョンディア6620は6.79リットルの4バルブ6気筒ターボエンジンを搭載している。あらゆる段階で安定した出力を維持し、負荷のピーク時にもなんなく対応できる圧倒性、回転力の上昇する比率を高いままに保持する能力を兼ね備えている。湿地でもアスファルト路上で13tの負荷をかけても安定して走行できるトルクを持つ。負荷をかけると回転数は1000rpmまで下がってしまうが、そこからの立ち上がりは早い。


【キャビン】ニューホランドは旧機種より進歩・熟成度に欠けるジョンディア
■ニューホランドTS135A・・・4点
ニューホランドTS135Aは新型のキャビンを採用している。前面のガラスは広々としており、ドアはピラーレスの全面ガラス製で、旧機種と比べて視野は広がった。またジョンディア6620より縦は65mm、横は157mmも広い。正面の計器配置は整然としているが、上部の液晶ディスプレイへの視界がカバーによって遮られてしまうのが難点だ。エアコンの噴出口は正面とシート脇に付いており、エアコンの動作音も静かである。側面には幾つものスイッチと、リンケージ以外の全てをコントロールできるトランスミッションディスプレイが付いている。助手席シートはオプションで装着可能だが、シート脇の収納ボックスを補助席として使用してもいいだろう。ウィークポイントは、半ドアになると音洩れが耳障りであること、またドアの開閉時に大きく横にスペースをとってしまうことである。乗降用のステップは急で、泥よけが後方視界を妨げる。キャビン内右脇のスイッチ類は、シートを回転させてやっと手が届く位置にあり不便だ。おまけに窓は開かない。エアコンが調整しにくいので窓が開かないのは痛いところだ。
(TS-Aシリーズの正面コンソールには、エアコンの噴出口が新たに配置された。)


■ジョンディア6620・・・3.5点
ジョンディア6620は、従来通の6020シリーズの「テックセンター」キャビンを使用している。若干変化も見られるが、快適なのは以前と同じだ。2ドアで、床面はフラットである。スプリング付きキャビンは標準で、エアサスペンションシートはオプションで装着される。車内は機能的に作られているが、茶とクリームの色合いはやや殺風景である。シートの調節が自由に効くので、運転するのは快適だが、ニューホランドTS-Aシリーズのような乗り心地のソフトさはない。ボンネットが突起しているので視界はあまり良くない。ジョンディア6620のキャビンはニューホランドTS135Aと比べれば小型だが、狭苦しく感じるほどではない。ただオプションで収納ボックスを設置することをお勧めする。シート後部のくぼみや、小さなコンソール、天井に付いた小型ボックスだけでは荷物をあまり積むことはできないからだ。エアコンは噴出口が正面に付いているだけなのであまり効果的ではなく、動作音もやかましい。コントローラーの配置にも不具合がある。PTOレバーには手が届きにくく、デフロックペダルは古めかしく、メインリンケージコントロールの設置場所も今ひとつ良くない。とは言え、ジョンディアのキャビンは整然と落ち着いた作りなので、操作にさほどストレスを感じることはないだろう。
(ジョンディア6620はドライビングポジションは、計器への視界を損なうことなく、あらゆる体型に合わせて調節可能だ。)

関連記事

powered by weblio