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種子販売自由化前夜

民間企業・団体による水稲育種・販売の最新動向

新食糧法施行にともない、イネの種子販売の形もかなり様変わりすることが予想される。「指定種子取扱業者」というものがなくなりそうなのである。米にかかわる一切が食管法によってコントロールされるこれまでの体制では、イネの種子も2つの法律によって国が流通を把握することになっている。一つは主要農作物種子法で、これ自体は“規制法”ではなく、主要農作物について“品質の保証された種子を安定して生産・供給する”ことを主旨としている。この法律は「指定種子生産圃場」を定め、そこでの生産について、圃場審査と生産物審査を行なうことになっている。そして現状、ここで生産されるイネの種子は、原則として都道府県ごとに普及すべき品種として定めた「奨励品種」である。いま一つは食管法そのものである。
 新食糧法施行にともない、イネの種子販売の形もかなり様変わりすることが予想される。「指定種子取扱業者」というものがなくなりそうなのである。

 米にかかわる一切が食管法によってコントロールされるこれまでの体制では、イネの種子も2つの法律によって国が流通を把握することになっている。一つは主要農作物種子法で、これ自体は“規制法”ではなく、主要農作物について“品質の保証された種子を安定して生産・供給する”ことを主旨としている。この法律は「指定種子生産圃場」を定め、そこでの生産について、圃場審査と生産物審査を行なうことになっている。そして現状、ここで生産されるイネの種子は、原則として都道府県ごとに普及すべき品種として定めた「奨励品種」である。

 いま一つは食管法そのものである。この法律では、種とはいえ米でもあるイネの種子についても流通ルートを特定することを定めている。そのためイネの種子を売買するには、農林水産大臣から「指定種子取扱業者」の指定を受けなければならない。そしてこの業者が取り扱う種子は、原則として主要農作物種子法に基づいて指定された種子なのである。現在この業者に指定されているのは、ほとんどが農協で、次いで肥料メーカー、日本たばこ産業などの民間企業等である。

 だが、新食糧法下では、米は“全量管理”の呪縛から解かれ、数量の届け出だけで流通させることが可能になる。ということは種子についても同様に流通が自由になるわけで、指定種子取扱業者の大臣指定はなくなると言われている。

 そして今は、民間企業が“バイオテクノロジー”に本腰を入れてからほぼ10年が経ち、とりわけ大量の販売量が期待できる水稲の新品種については、とくに育種の成果が出始めている時期なのだ。

 農水省も、今年3月に発表された一連の“規制緩和措置”の中で、これら民間育種を盛んにすべく、奨励品種指定以前の品種の米を実際に消費者に食べてもらう「試験販売制度」(平成3年運用通達の改正により実施)の周知徹底を図るとしている。また、これ以前の昭和61年には、民間事業者も農家に新品種の生産依託をすることが可能になっており、徐々にではあるが、民間育種・種子販売の門戸は開放されつつあった。法制度と技術の結実というこれら二つの要因から、今秋あたり、民間育種による新品種が一気に出回る可能性は高いのである。

 ただし、日本のあちこちですぐにも新品種が大量に生産され始める、というわけにはいかないと思われる。

「仮に指定種子取扱業者の大臣指定がなくなったとしても、都道府県の奨励品種制度というものがあるので、これで新品種が普及しやすくなるとは言えない。ある品種が広く生産されるようになるかどうかは、やはり自治体の戦略と合致するかどうかが決め手であるし、もちろん生産者の“生産したい”というニーズを喚起できるかどうかによる」(農林水産省農蚕園芸局農産課課長補佐別所智博氏)

 最も重要なのは法制度云々ではない。当然ではあるが、それら新品種がどれはどの実力を備えているかが問題である。以下、主な民間育種の現状を報告する。

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