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同伴者たち

「お客さんが求めているものを考えることから進めましょう」(株)アレフ 庄司昭夫

 そして自立した経営をしていくにしても、“しなくてもいい失敗”は避けなければいけない。そのためには利益を得るための方法論である“理論”も必要になるでしょう。しかし、それ以前にもう一つ、どうして利益を得ようとするのかという“理念”が絶対に必要です。

 私の場合、創業の初期に、商業界の先生や先輩だちから、自分の理念を持つためのヒントをたくさんもらいました。そのおかげでここまでやってこれたように思います。それはどのようなものかと言いますと、“利益”というものはどういう意味を持ったものか、そのことを常に考えるというものです。その一つは、「世の中のために君の店は存在したほうがいいのか、なくてもかまわないのか考えてみよう。なくても誰も困らぬような店なら、存在意義がないのではないか」

 というものでした。自分かちがどれだけお客さんの役に立ち、必要とされているか。そんな仕事ができているか。それができていないのでは本当の商業者ではないと言うのです。また商売は“食うため”にするのではいけないのだとも言います。世の中の人々に役立つためにするのが商売であって、これは自分が食えても食えなくても、お金があってもなくても、人間の生活や文化を豊かで楽しいものにするために行なうものだと、そう腹に決めてかかるべきだということです。

 また、事業にはビジョンがあることが大切だとも教わりました。夢を持てること。ただし小さな希望ではビジョンとは言えない。いまの100倍とか1000 倍とか、女房に話したら呆れて笑い出すくらいでないとビジョンではない。いま1000万円売っているのだったら10億円とか、100億円とかを売ろうと考える。それだけ売れるようになるくらいお客さんに貢献できること、支持されることを夢見る、ということです。そういう夢は、自分や社員が社会のために役立とうとする原動力になります。

 しかし、その売上規模や利益そのものは、目的ではありません。利益というのは自分たちがお客さんに貢献できたかどうかの一番わかりやすい証明です。だから儲けが出ないということはいけないことだと言います。けれども、自分たちの手許にたくさんのお金を集めることが目的なのではない。だから優れた商業者たちは“いかに少なく儲けるか”ということを考えているものです。お客さんに支持されて、いっぱい来店してもらう、繁盛することが目的です。それには原価もかけなければならないでしょう。“儲ける”と“繁盛する”は違うのです。その意味では、売上げや利益が大きいことより、客数が多いことのほうが大事です。

 これらのことは商業で言われる大原則の一つですが、農業者のみなさんや、また農協にも当てはめて考えられることではないですか。農業の世界でも、真摯な気持ちで利益や客数を考え、そして大きなビジョンが抱けるようでなければ。しかし「大きなビジョンなんて考えられない」、「それができる環境じゃない」と言う人もいると思います。けれども、なにかをやっていて限界を感じたら、それは自分がつくった限界ではないかと疑ってみるべきではないですか。そんな限界を自分でつくって、“農業とはこういうものだ”なんて柵を巡らして、そこから出ないようにする。自分で監獄をつくる必要はないはずです。ビジョンというのは、商業の世界でもなんでも、いまはどう考えたってできっこないことを目標に掲げることをさしているんですから。

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