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【エクセレント農協探訪記】
組合員自身が今後の方針を選択 独自の販売部親切に踏み切った
- 土門剛
- 第3回 1995年06月01日
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農協を選別してもらう
西都農協の羽田正治組合長が現ポストに就いたのは、今年3月のことだ。副組合長からの昇格だったが、就任後、矢継ぎ早に「西都農協改革プラン」を断行した。その中身は、羽田組合長の柔和な表情とは一転して、極めてドラスチックなものだった。ポイントは、「組合員に農協を選別してもらうこと」、「農協独自の販売部を新設したこと」、「農協施設の整理統合と農協資本によるレンタル・ハウスの建設」の三つだ。
一つ目のポイント「農家に農協を選別してもらうこと」について、詳しい説明を求めると、羽田組合長は言葉を選びながらこう説明してくれた。
「今まではなるべく組合員を減らさないという方針で、組合員をお客さん扱いにしてきました。この考えでは農協が組合員を切ることはできません。そこで組合員から農協を選んでもらおうということにしたのです。市場で行くのか、あるいは農協で行くのか、組合員に選択してもらって、残る組合員とは農協は徹底的にやろうと。」
外部から見ていると、西都はエクセレント農協にしか映らないが、中に入ると、それ相応の悩みはあるらしい。とくに組合員農家による農協利用率が年々低下傾向にあることはその最たる例だ。これを食い止めることが、羽田組合長に負わされた責務の一つだ。その農協利用率は、販売事業では約8割と、園芸産地の農協にしては大健闘の数字だ。羽田組合長がこのような考えを打ち出しだのは、その背景には、組合員との間でより強固な関係を築き、地域農業の基盤を確立したという考えがあるようだ。
園芸産地としての宮崎は、市場関係者にとって垂涎の的である。おっとりした県民性を反映してか、生産者の気質が篤実であり、それが生産物の品質にストレートに出ている。しかも一戸当たりの経営面積も、他県に比べて大きく、量を確保することが比較的容易であり、これが商人系の集荷業者にマーケット・チャンスを与えているようだ。現に、宮崎には商人系の集荷業者による市場が整備されていて、そこでの取引が活発に行われている。取引は市場で行い、農協には代金回収業務だけを任せるという組合員も決して少なくないようだ。
西都に限らず農協幹部の悩みは、組合員による農協組織のつまみ食いであるようだ。つまみ食いとは、少々言葉は悪いが、農協事業の一部だけを利用することを言うらしい。
羽田組合長の「組合員に農協を選別してもらう」は農協と運命共同体で地域の農業に取り組む組合員を選別して、そうした組合員と重点的に付き合っていこうという考えとも受け取れる。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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