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旅の曲者

変わる世界、変わらない風景

カイロから数百キロ離れたシナイ半島にあるその町に初めて訪れたのは、湾岸戦争のはじまる前年の春だった。ガイドブックによると、そこは世界でもっとも美しいサンゴ礁が見られるという、知る人ぞ知る海辺の町とのことだった。しかし、ローカルバスを降りたった目に飛び込んできたのは、砂の中に埋もれそうなうち捨てられた集落の姿だった。
 カイロから数百キロ離れたシナイ半島にあるその町に初めて訪れたのは、湾岸戦争のはじまる前年の春だった。

 ガイドブックによると、そこは世界でもっとも美しいサンゴ礁が見られるという、知る人ぞ知る海辺の町とのことだった。しかし、ローカルバスを降りたった目に飛び込んできたのは、砂の中に埋もれそうなうち捨てられた集落の姿だった。

 白く霞む断崖や岩山が周りを囲み、陽炎のたちのぼる暑気の中で、朽ちかけた家々が揺らめいていた。その曲がった空気の中を遊牧民にひかれたラクダがゆっくり歩いていった。リゾートめいた華やぎはみじんもなかった。かつて砂漠の隊商宿だった時代の方が、いまより栄えていたのではないかと思えるほどだった。ただ、目の前に広がる海だけが、息をのむほどに青く澄んでいた。

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