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【耕すということ】
圃場の均平耕レーザー利用で基盤整備を自分で!
- 農学博士 村井信仁
- 第12回 1995年08月01日
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基盤条件整備が作業精度を高める
とかく機械は万能であるととみられがちだが、機械は使う条件を整備して初めて能力を発揮するものであることを知るべきである。例えば、田植機の開発経過はこうだった。
田植機の開発は大正時代から始められているが、形を整えるのは、昭和40年代のことである。何故遅れたかと言えば、慣行根洗い苗に執着したことによる。根洗い苗は個体差があるので、それを人間の指のように正確に3本選び出し植付けることは至難の技だった。
紆余曲折の末、田植機の利用条件を整備すること、そのためには苗を変えて個体差をなくした上付き苗が開発された。紐苗(ひもなえ)から始まり、マッ卜苗、型枠苗、紙筒苗、ポットシート苗と拡大したが、そのことによって初めて実に単純な機構で植付けることが可能になった。しかも、上が付いていることで植傷みもなくなり、根洗い苗よりも生育が優る結果をも引き出してしまったのである。
播種機はどんな圃場にも、正確に播種できるものでなければならないとするのは素人が考えることである。いろいろな装備をすれば、それは可能であっても、すべてを満足させるように重装備したものは、意外と調整に手間どって却って能力を発揮しないのが通例である。
農業機械には単純な構造のものが生き残ると言う鉄則がある。播種機の性能を高めようとすれば、まずは機械を高度で複雑なものにするよりも、砕土整地に力を注ぐことである。必要最少限の装備でも、所定の播種はできる。単純な機械の方が取り扱いやすく、能率的である。機械に耐久性もあり、嫌われることはない。
条件整備のため、前に攻める考え方から、砕土、整地作業を容易に行なおうとするならば、耕起法に留意することである。耕起作業をきちんと行なおうとするならば、基盤整備をしておくことが肝要である。このように上手な機械の使い方の基本は、常に後作業を考えて、その条件を前提に整備することであり、機械を理解した人ならば必ずそうする筈だ。
水稲の低コスト化のために、我が国でも一部直播栽培を導入すべきとされ、各地で研究開発が行なわれている。直播栽培をしようとすれば、圃場が均平であることが第一条件である。均平でないと低い場所は水深があって発芽不良、高い場所は発芽に支障はなくとも除草剤の効果が低下し雑草に悩まされるなどの問題が生ずる。
これまで、水田の均平化は代かき機で行なわれていた。代かきをしないことが直播に有利であれば、耕起後の圃場をどのようにして均平にするかである。代かき機の場合は、水と言う基準になる物差しが存在したが、乾田状態ではそれが望めない。
水田は常に均平なのではないかと考えてはいないだろうか。一年経過すれば大なり小なり不陸現象は起きるのである。大型水田になる程、それが顕著に現われる。基盤が不均一なので止むを得ない現象であるが、これにどう対処するかである。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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