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黒ボク土
黒くて、ホクホクした土ということで付けられた名前ですが、一般に腐植質火山灰土のことを示します。非火山性の黒ボク土は、日本国土の1/6また農耕地の1/3を占めている実にクセの強い土です。外観は、世界一の肥沃土、チェルノーゼムとそっくりですが、性質は全く違います。チェルノーゼム同様に腐植を含むことで黒い色を呈しているのです。腐植含良が40%を超えるものもあります。ではなぜ、赤黄色土では腐植をほとんど含まないのに、火山性黒ボク土が同じ日本国土に存在していながら腐植を多く含むのでしょうか。これは粘土鉱物の違いにその原因があります。火山灰土は含まれる粘土鉱物がアルミニウムの比率の高いアロフェンというもので、これは腐植とたいへん強く結び付きます。このため、腐植が含まれているといっても、分解しにくく、作物の栄養に供することは少ないのです。この火山性黒ボク土、またその下層に存在する淡黄色の心土は、昔から作物がとれない土として農家から特別視されてきました。地方によりノバイ、ノフイ、ボク、ノッペ、ノッポ、ノップイ、ボンコなどと呼び、肥料ばかり食って手に追えない土として一般の土とは分けてきました。
その原因は腐植が分解しにくいだけでなく火山灰土のアルミニウム活性という現象によるものです。これは、石炭の施用による酸性矯正や、リン酸肥料が手に入らない時代には顕著でした。この種の土は、pHが中性域より少しでも下がるとアルミニウムの活性化がたいへん強まります。そしてリン酸アルミニウムという作物にとって肥効のないものにしてしまいます。戦後の開拓事業はこの土のメカニズムを解明して、解決することが大きな課題でした。
また軽くて、非常にもろいのもその特徴です。土の固相率というものがあって、個体の割合がどのくらいかという数字ですが、火山灰土以外ではだいたい40%ぐらいありますが、この火山灰性黒ボク上は15~18%程度、仮比重は0・7以下です。このため、同じ作土を確保しても、一般の土より生産力が劣ってしまいます。また風の強い時期には、大切な表層土を風食により奪い取られてしまうことになり、農家泣かせの土です。
しかし、反面ふわふわしていて、耕しやすく、土の粒径も壌土という範囲のため適当によく、水はけ、水もちが適当に確保されやすいのも長所です。また、この黒ボク土が存在する土層は深く均一であることから、根菜類をはじめ、多くの産地形式をしています。今後の黒ボク土の課題は、母材が火山灰であり、それが極度に風化作用を受けてしまっていることから、微量要素の補給をどうするか、この点が作物の食味向上に確実に関連しているので研究の余地があります。
褐色低地土・灰色低地土・グライ土
この3種類の上は沖積低地に存在する土で、河川より運ばれた粘土、砂、蝶が母材となっています。褐色低地上は地下水が低いため、年間を通じて地下水の影響を受けることがなく、畑地としての利用が多い土地です。物理性のよい、作物がつくりやすい土です。灰色低地上は、雨の多い時期や濯漑水の影響を受けるときは地下水位は高いですが、それ以外のときは低くなります。水田利用されることが多いのですが、作土そのものは浅く、すぐ下に陛層を含むことが多いのです。たいへんサラサラした感じで、畑作、また水田裏作にたいへん優利な土です。
グライ土は、年間地下水位が高く、強還元状態におかれ、鉄は還元鉄として存在するため土の色は暗灰色から緑灰色を呈するのが特徴です。このような排水不良状態ですから、水田としての利用しかできませんが、水田としても酸素供給不足をおこしてしまうという生産力の低いものです。このため、暗渠排水による改善を徹底して行なうより他に改善策はありません。我が国の水田の30%程がこのグライ土壌であることは大変な問題といえます。
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関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
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