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【拡大する農協間格差】
もう一つ、農協主導の食品コンビナートも太田の公約であり、夢の実現だ。士幌町農協の代名詞のような馬鈴薯コンビナートは東洋一の規模だ。全自動の製造装置で作り出されるポテトチップスは、この円高にもかかわらず健闘している。産地直結の加工体制のメリットをフルに活かしたフレッシュさが売り物だ。最近は電子レンジで簡単に加工できる冷凍コロッケが急ピッチで増えている。この分野は輸人物ではなくメイド・イン・士幌町農協の冷凍コロッケが独壇場だという。
全自動一貫機械化設備の澱粉工場は、日量1800t、年間18万tの処理能力で東洋一の設備だ。チクワやカマボコなど水産練り製品の副原料に使われている。馬鈴薯の芽止めに導人したコバルト照射センターは全国でここだけだ。これら一連の設備に200億円に上る費用を投じてきた。
士幌町農協の真骨頂は、施設が管外にもあることだ。東京へのフェリー航路がある苫小牧には農業倉庫が3棟。埼玉県熊谷市にも首都圏市場を睨んだ消費地集出荷施設を整えた。これだけの集出荷施設は経済連でも上位にランクされる経済連の施設規模を誇る。
士幌町農協の販売額は昨年3月末時点で199億円だった。販売シェアは、畜産物が37%、次いで牛乳21%、馬鈴薯16%、ビート111%、小麦7%と続く。一方、飼料や肥料など購買事業の取扱高は87億円。これがほぼ全量系統利用という驚きの数字だ。
最近目立ってきたのは、周辺の農協組合員による員外利用の増加だ。周辺の農家の話によると、飼料や肥料など農業資材価格は周辺農協より割安だという。おそらく組合員による農協の全量利用を武器に連合会から有利な仕入値を勝ち取っているに違いない。
貯金も員外利用が増えている。これも金利面でメリッ卜があるに違いない。優良農協になればなるほど対連合会の仕入価格や配当などは有利になるは組みのようだ。それが優良農協をますます強くし、逆に経営不振の農協はますます経営が悪化する原因でもあるようだ。この点について森本勝組合長は、
「利用率が100%といえば嘘になりますが、それに近い数字だと思います。全量運動に向けて青年部、婦人部が頑張ってくれた結果ですが、商系業者に価格で負けちゃいけないとか、あるいは農協の経営ビジョンに対して組合員の理解を得るべきとか、職員の努力も無視できないものがあるんです」と説明する。
士幌町農協の現状を見ていると、今後の農協の流れがある程度読めてくるようだ。販売や購買の経済事業ではなく、信用事業でも員外利用が増えていく過程で農協の淘汰選別が始まっていくという図式だ。別の言葉で表現すれば、農協も組合員に選択される対象となるということではないだろうか。
もう一つ、農協主導の食品コンビナートも太田の公約であり、夢の実現だ。士幌町農協の代名詞のような馬鈴薯コンビナートは東洋一の規模だ。全自動の製造装置で作り出されるポテトチップスは、この円高にもかかわらず健闘している。産地直結の加工体制のメリットをフルに活かしたフレッシュさが売り物だ。最近は電子レンジで簡単に加工できる冷凍コロッケが急ピッチで増えている。この分野は輸人物ではなくメイド・イン・士幌町農協の冷凍コロッケが独壇場だという。
全自動一貫機械化設備の澱粉工場は、日量1800t、年間18万tの処理能力で東洋一の設備だ。チクワやカマボコなど水産練り製品の副原料に使われている。馬鈴薯の芽止めに導人したコバルト照射センターは全国でここだけだ。これら一連の設備に200億円に上る費用を投じてきた。
士幌町農協の真骨頂は、施設が管外にもあることだ。東京へのフェリー航路がある苫小牧には農業倉庫が3棟。埼玉県熊谷市にも首都圏市場を睨んだ消費地集出荷施設を整えた。これだけの集出荷施設は経済連でも上位にランクされる経済連の施設規模を誇る。
士幌町農協の販売額は昨年3月末時点で199億円だった。販売シェアは、畜産物が37%、次いで牛乳21%、馬鈴薯16%、ビート111%、小麦7%と続く。一方、飼料や肥料など購買事業の取扱高は87億円。これがほぼ全量系統利用という驚きの数字だ。
最近目立ってきたのは、周辺の農協組合員による員外利用の増加だ。周辺の農家の話によると、飼料や肥料など農業資材価格は周辺農協より割安だという。おそらく組合員による農協の全量利用を武器に連合会から有利な仕入値を勝ち取っているに違いない。
貯金も員外利用が増えている。これも金利面でメリッ卜があるに違いない。優良農協になればなるほど対連合会の仕入価格や配当などは有利になるは組みのようだ。それが優良農協をますます強くし、逆に経営不振の農協はますます経営が悪化する原因でもあるようだ。この点について森本勝組合長は、
「利用率が100%といえば嘘になりますが、それに近い数字だと思います。全量運動に向けて青年部、婦人部が頑張ってくれた結果ですが、商系業者に価格で負けちゃいけないとか、あるいは農協の経営ビジョンに対して組合員の理解を得るべきとか、職員の努力も無視できないものがあるんです」と説明する。
士幌町農協の現状を見ていると、今後の農協の流れがある程度読めてくるようだ。販売や購買の経済事業ではなく、信用事業でも員外利用が増えていく過程で農協の淘汰選別が始まっていくという図式だ。別の言葉で表現すれば、農協も組合員に選択される対象となるということではないだろうか。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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