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【自分の経営を客観的に診断する】
利益管理の方法は、損益構造図と利益図表から学びとる
- 矢尾板日出臣
- 第7回 1995年08月01日
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今回は、北陸の平坦な水田地帯において、稲作9.7ha、受託作業延べ38.8ha、麦作等2.6haを経営主夫婦と両親の4人労力で営んでいる大型経営者を事例として取り上げて、損益計算書から分析・診断してみましょう。
損益計算書は、計算期間、通常は1年間の利益に対する損失・純利益の関係が分かる様式になっています。今回はこれに基づいて損益の構造をボックスで示し、かつ、関係比率を求めてみましょう。視覚的に理解しやすくなるばかりでなく、多くの分析情報が得られる筈です。さらに利益図表を作成すれば、利益形成の仕組みを読み取ることができます。
損益分析を進めるに当ってば、損失、すなわち、費用を変動費と固定費に分けることが必要です。これは費用分解といわれ、できるだけ正確でないと正しい分析ができません。費用分解は、どちらに編入すべきか議論のある費目もありますが、変動費は種苗費、肥料費、農薬費、燃料費、電力料金、諸材料費、修理費、小農具費、賃借料料金、作業用被服費、雇用労賃とし、固定費には償却費、土地改良負担金一水利費、支払利子、支払地代、経営負担租税公課、販売・管理費とします。
収益は売上高とし、これより変動費を差し引いて限界利益を求めます。これの大きさは固定費の吸収力と所得の形成力を示す重要な指標です。所得は上の変動費と固定費からなる家族経営費を差し引いて求められますが、分析の都合から限界利益から固定費を差し引く手続きをとります。これは一般的に存立している家族経営の経済目標ですから、最も重視される分析指標といえます。さらに所得から家族労働の評価額を差し引いて資本利潤を求めます。これは経営に投下した自己資本の働き高を意味しており、企業的な経営にとっては見逃せない指標となります。これの大きさは、所得を与えられた条件とすれば、専ら家族労働費をどのように評価するかによって決まります。最後に、資本利潤から経営者能力に帰属する企業利潤を分離計算するため、自己資本利子と自作地地代を確定しておきます。以上の数値は表1に示すようであり、確定すべき家族労働費や自己資本利子、自作地地代について、ここで採用した見積り方法は、同表の脚注に示しておきました。
損益計算書は、損益等式
“利益-損失=純利益”から導かれる
“損失+純利益=利益”の等式によって表示されます。
すでに表1で損益計算書を拡張し、損益構造図を作成する準備ができましたので、それに基づいて図1に全部門の、図2には主部門である稲作部門のそれを描き、合わせて関係比率を求めることにしましょう。なお、ここでは図解の都合から、左側の売上局に対する右側の費用・純利益の関係に置き換えました。以下、2つの図に示されてあるボックスの大きさと関係比率から、費用の投人と利益形成の在り方を考えてみましょう。
売上局に対する変動費の割合を変動費率とします。これは売上局1000円を確保するのに要する変動費の大きさで、費用の効率を示す重要な指標です。それは全部門の場合240円71銭ですが、稲作部門ではそれよりもはるかに少額の156円69銭にとどまっています。全部門で高額になっているのは、表1でみるように受託作業部門と麦作等部門できわめて多く要しているためです。これらの部門では、売上局に見合う変動費の投人によって費用効率を高める努力が必要だといえます。
損益計算書は、計算期間、通常は1年間の利益に対する損失・純利益の関係が分かる様式になっています。今回はこれに基づいて損益の構造をボックスで示し、かつ、関係比率を求めてみましょう。視覚的に理解しやすくなるばかりでなく、多くの分析情報が得られる筈です。さらに利益図表を作成すれば、利益形成の仕組みを読み取ることができます。
損益計算書の拡張 分析資料の整理
損益分析を進めるに当ってば、損失、すなわち、費用を変動費と固定費に分けることが必要です。これは費用分解といわれ、できるだけ正確でないと正しい分析ができません。費用分解は、どちらに編入すべきか議論のある費目もありますが、変動費は種苗費、肥料費、農薬費、燃料費、電力料金、諸材料費、修理費、小農具費、賃借料料金、作業用被服費、雇用労賃とし、固定費には償却費、土地改良負担金一水利費、支払利子、支払地代、経営負担租税公課、販売・管理費とします。
収益は売上高とし、これより変動費を差し引いて限界利益を求めます。これの大きさは固定費の吸収力と所得の形成力を示す重要な指標です。所得は上の変動費と固定費からなる家族経営費を差し引いて求められますが、分析の都合から限界利益から固定費を差し引く手続きをとります。これは一般的に存立している家族経営の経済目標ですから、最も重視される分析指標といえます。さらに所得から家族労働の評価額を差し引いて資本利潤を求めます。これは経営に投下した自己資本の働き高を意味しており、企業的な経営にとっては見逃せない指標となります。これの大きさは、所得を与えられた条件とすれば、専ら家族労働費をどのように評価するかによって決まります。最後に、資本利潤から経営者能力に帰属する企業利潤を分離計算するため、自己資本利子と自作地地代を確定しておきます。以上の数値は表1に示すようであり、確定すべき家族労働費や自己資本利子、自作地地代について、ここで採用した見積り方法は、同表の脚注に示しておきました。
損益構造図と 関係比率による分析
損益計算書は、損益等式
“利益-損失=純利益”から導かれる
“損失+純利益=利益”の等式によって表示されます。
すでに表1で損益計算書を拡張し、損益構造図を作成する準備ができましたので、それに基づいて図1に全部門の、図2には主部門である稲作部門のそれを描き、合わせて関係比率を求めることにしましょう。なお、ここでは図解の都合から、左側の売上局に対する右側の費用・純利益の関係に置き換えました。以下、2つの図に示されてあるボックスの大きさと関係比率から、費用の投人と利益形成の在り方を考えてみましょう。
売上局に対する変動費の割合を変動費率とします。これは売上局1000円を確保するのに要する変動費の大きさで、費用の効率を示す重要な指標です。それは全部門の場合240円71銭ですが、稲作部門ではそれよりもはるかに少額の156円69銭にとどまっています。全部門で高額になっているのは、表1でみるように受託作業部門と麦作等部門できわめて多く要しているためです。これらの部門では、売上局に見合う変動費の投人によって費用効率を高める努力が必要だといえます。
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