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2年前からコメと麦の二毛作への挑戦も続けている。農地面積の制約を超えて収入を増やすために取り組むことにした。これは直播と連動したものと考えている。
「表作のコメの収穫を11月初旬までにすませます。同中旬頃までに裏作となる麦の播種作業に入ります。収穫は翌年6月中旬頃です。そこから1週間は、収穫、代掻き、稲の播種と3つの作業に集中的に取り組む『戦闘モード』に突入してしまうのです。その1週間は、死にものぐるいで仕事に取り組みます。夜はトラクタで仮泊することもあります」
実は、食糧増産が叫ばれた60年代まではいわき市でも米麦二毛作はごく当たり前のことだった。その頃はまだ専業農家の時代で農家は真剣に増産に取り組んでいた。福島県稲作経営者会議の先輩が教えてくれた話だ。兼業スタイルの稲作スタイルが定着するにつれ、稲作単作に移っていく。米麦二毛作に挑戦した和田君の動機をぜひ紹介しておきたい。
「農業でもそうですが、機械や施設や建物を設える装置型の商売は、稼働率がポイントだと思います。トラック会社だって、利益を上げるにはトラックや荷役施設の稼働率を向上させることがイロハのイ。それを運送会社勤めで会得したのです。米麦なら使う機会も同じで余分な機械投資もしなくてすむ。限られた農地条件で利益を上げていくのは、これが最短コースだなと思いました」
横並び意識の強い農家は、自分が突出するようなことを嫌がるが、和田君にはそうしたところがない。肥料・農薬はすべて商系で仕入れている。2、3割は安い。同じものを高く買う理由はどこにもない。
「コメの相場は低い方がいいですね。いまなら1万2000円ぐらいでいい塩梅。2万円は絶対ダメ。誰も辞めないから、みんなダメになってしまう。1万割ってもそこそこ食える人は残るでしょう。9000円で安定収入!って言えるぐらいじゃないと、世界と戦えない時代なんじゃないかと思っています」
「補助金に縁がなくて」
トラクタは3台。田んぼに使う85馬力と75馬力、ハウス作業用の20馬力。コンバインは6条刈1台。田植機は8条植2台。乾燥機は、処理能力50石タイプが4台。これで25haの作業を一人でこなす。息子は3人おり、長男は来春高校を卒業する。戦力になるのは早くて数年後だ。
機械類はわずか5年で備えた。自己資金で揃えることが多く、そのおかげで機械や施設への過剰投資をしなくてすんだようだ。
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和田正人 ワダマサト
和田農場
代表
1967年福島県いわき市生まれ。高校卒業後、土建、運送、保険、工場、ホテル、飲食など多種多様な職種を遍歴し、39歳に就農。脳梗塞で倒れた父の後を継ぎ、専業農家に。現在、経営面積は25ha(食用米、餅米、小麦、小豆)。小豆と麦はコメとの二毛作。就農してすぐから、直播栽培にも取り組む。母、妻は自家製の原料を使った大福餅、お萩、おにぎりなどの加工を担当。地元5カ所の直売所に出荷。稲作経営者会議に所属。東日本大震災以前、阪神淡路大震災(95年)、宮城県沖地震(78年)を経験。モットーは「日本で誰にも負けないファミリー農業」。
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