ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

リスク回避と経営発展のための新天地を探す 農場“分散・移転”のススメ


実はマーケット付近における生産は、これまで渡邉氏が手がけてきたことだった。渡邉氏が家業を継いだのは2003年のこと。フィリピンから帰国後は地元の絹糸紡績会社に勤務し、世界中から絹の原料を買い付けて生産拠点のタイに送る仕事を担当していた。その経験とコネクションが現在の大きな財産になっており、同時にパートナー選びとマーケティングが成功するポイントであることを学んだという。

「海外で農業を行うには、現地の人や「土地あるから試してみる?」と門戸を開く他産業の現地法人など、パートナー探しが必須になる。そこでいいパートナーを見つけるには、現地に足を伸ばして、具体的かつ積極的に話をすること。「私は今までこのような栽培をやってきて、この品種を得意としている。それをあなたは買ってくれますか?」と詳細と意気込みを提示して初めて、相手からは「買います」「買えないけど一緒にやります」といった答えが出てくる。その土台がなければ、「何しにきたの?」で話は進まない。またマーケティングは最重要事項で、販売は生産と一体であるから必ず試験時にも取り組んでおくべき。いいものを作っても売れなければ意味はない。売れないものは良いものでないですから」

渡邉氏は東南アジアで過ごした経験上、バンコクはオーストラリア産のブドウ、マニラはアメリカ産のブドウが中心で、そこでジャパンプレミアムのブドウは価格が高くても確実に売れる状況を確信している。だから現在、ヨーロッパからもオファーがあり、一大産地であるオーストラリアでも品種的に通用する自信はあるが、受け入れられるかどうか調査中のためまた信頼できるパートナーが決まらない為、慎重な態度を崩さない。

かつての失敗に関しては、天候問題は栽培に適する場所を粘り強く探すことで、土壌問題は長い時間かけて磨いた改良技術と最新技術によって解決が見ているという。政情不安は個人の努力で解決できる範疇にないが、「日本人が長く安定的に事業を営んでいる土地を目安にする。白紙で始めるよりはずっといい」と考える。

現在は、以前に勤めていた絹糸紡績会社の子会社がタイで身売りし、工場敷地内に試験用プラントを作る話を進めていたが、頓挫。「試験場になる土地は投資するなど、もう少し自分もリスクを持つべきだったかもしれない」という反省を活かしつつ、タイでは別の交渉を開始している。またフィリピン、インド、中国でも平行して交渉が進んでおり、特にかつて買いつけに行っていたインド南部の都市は、「土地も肥沃で金持ちも多い。ここでやらないでどうする? という気持ち」と強い意気込みで挑む。その成功の先には、農場の分散・移転もあるという。

関連記事

powered by weblio